毎日食卓に並ぶ色々な食べ物、飽食社会とも言われる現代の私たちは、食の豊かさを享受しています。外食や中食、ファーストフードやコンビニ弁当など、選択が自由にできます。しかし今日本は、食料の60%を海外からの輸入に頼っています。政府は2015年までに食料時給率を45%に引き上げることを目標にしていますが達成は難しい模様です。7月に開催された洞爺湖サミットでも、世界的な食料問題が議題に浮上しました。今も地球上には、日常の食事にも事欠く人たちや餓死していく人々がいるのが現状です。将来の世界的な人口増加による食物需給の逼迫と、気候変動や原油価格の高騰、バイオ燃料問題などにより、食料価格の高騰や輸出規制などが問題化してきています。その影響を真っ先に受けるのは貧困な弱者たちです。そして外国へ食料を依存している自給率の低いわが国日本などです。私たちの生活にそれらが及ぼす影響は、どのようなものがあるのでしょうか。
まず、私たちが食料の現実を知ることが大切です。食料自給率低下の背景には、第一に大量の食品を輸入し、大量に廃棄するという日本のフードシステム自体の問題があります。スーパーやコンビニではまだ食べられる食品でも、品質管理のため消費期限前に棚から撤去され廃棄されています。形の悪いものや色がきれいでないものも対象です。外食産業においても毎日大量の食べ残しが廃棄処分されているのが現状です。外国からの輸入に頼っているのですから、これらのフードシステムを抜本的に見直す必要があります。これらの対策として、あるコンビニでは弁当を店頭調理に切り替えたり、残さを飼料に加工して家畜に与える企業の出現など、新たな取り組みも行われ始めています。「もったいない」の精神をもつことが大切です。
第二に、日本農業の体力低下があります。農業人口は高齢化の傾向を辿り65歳以上の割合は58%で、専業農家においては70歳以上が半分を占めるという現状です。また後継者不足も深刻化しています。
若い世代が農業に魅力を感じるような取り組みが必要なのです。誰でも賃貸で営農できるようにするとか、コメ粉利用のパンの売り出しや、異業種と融合し加工、直売、観光などを行うなど、農業関連の新たなビジネスの展開に目を向けるべきです。生産者と消費者の連携が確立されれば、新たな農業のスタイルに繋がると考えられます。
第三は、私たちの消費者行動です。買い物をするということは、社会に一票を投じると同じことなのです。どの企業を応援するか、その企業を通して社会を応援することなのです。安さや便利さだけの追求でよいのでしょうか。食品を購入する際には、「フードマイレージ」を考えて見てください。「フードマイレージ」とは、食料が生産地から消費者に届くまでの距離×重量をさします。つまり、遠くから運ばれてくるものはフードマイレージが増大します。2000年における日本全体のフードマイレージは、約5000億t.kmで、国民一人あたりにすると約4000t.kmで韓国の約1.2倍、アメリカの約3.7倍になります。これは、日本の食料輸入が多いために当然高くなり生産地と食卓の距離が遠くなるほど輸送時に温暖化ガスがたくさん排出され環境に悪影響を及ぼします。日本は「フードマイレージ」世界一なのです。私たちのライフスタイルの変化がもたらした結果です。
今、私たちはもう一度ライフスタイルを見直し、日常の消費行動を考えてみるべきです。安全で安心な食生活のために、自分がとる行動に責任を持つことです。賞味期限を絶対のものと考えず、自分の五感を信じること、食品添加物に過剰に反応したりせず、化学的知識をもつことも必要です。安さの追求が逆に消費者の不利益を生む場合もあり、「安いものばかりを求める消費者にも責任がある」と言った偽装事件で逮捕された社長の言葉は責任転嫁とも思えますが、消費者にも考えさせる機会がありました。安心と低コストを同時に求める姿勢は、今後再考する必要があるのかもしれません。量、安全性、経済性、環境面など、何に重点をおいて食料を入手するのか、自分が持つ社会に対する議決権を正しく行使したいものです。また、日本型食生活の見直しや、食育のあり方など、私たち消費者の行動が食の未来の鍵を握っているのかも知れません。