第9回
やるぞ!半農生活、
軌道修正から見えてきたもの。
世界中が大変だ。日本中が大変だ。都会も田舎も大変だ。毎日毎日、メディアを賑わす負のスパイラル。全国的に底なしの不況の中で山陰地方鳥取県もガタガタだ。交付金も減ってきている上に、税収は大幅にへこみ、果たして不足ない行政サービス、地域経営が出来るだろうか?未来は見えてくるだろうか?・・・気分は沈むばかりだ。隣りで暮らす90才にも近いおばあちゃんが新聞、テレビのニュースをみては心配している。「わしらは戦争、もののない時代を生き延びてきたからこのくらいの不況はなんでもないけど、子や孫たちの将来を考えると、夜も眠れない時がある。大学を卒業しても就職口があるか?」と、心配してくれる。
でも、幸いなるかな。この世界不況のお陰で、ブレーキ(自制心)の錆付いた人類が一時でも立ちとまることができたのだ。「このままではいけない」と思いはじめた。何がいけなかったのか?と明確に見えたわけじゃないけど、それは膨らむばかりの虚構経済、詐欺的な株価、オイルマネーの支配、ドル依存などからの脱出かもしれない。このままではいつか、地球は爆発してしまうのではないか?と、ずっとココロの底が軋み続けていたから。
しかし、よくよく考えてみよう。田舎の一人よがりの論理かもしれないが。近年、日本は農業国であるにもかかわらず、農業から目線を逸らし「工業中心で企業向き」の政治をしていたから一層悲劇的になってきたのではないか。工業国、技術立国を目指すのもよろしいが、農業を疎かにしてきたツケがきていると言えなくもない。緊急経済対策?生活支援?こんなものは当てにしては居られない。自己防衛に入りつつ、攻めの方法も考えねば・・・などと、これからの生きる術を考える日々である。
いい機会でもあるので、農業を考えていこうと二人で経営戦略会議。幸いにも、私たちには農地がある。山や畑、田んぼがある。高齢ではあるが、農業の先生も隣りでがんばっている。
農産物の産直ネットショップの取り組みや農産物直売所への売り込みにも挑戦。どう差別化をすればアピールできるのか?何を売りにするのか?大手のネットショップシステムに乗っかれば、ある程度の成果は得られるだろう。しかし、それにも結構な資本が必要。地道ではあるが、独自の道を歩もうと日々、コツコツと悪戦苦闘しているこの頃だ。
昨年は、「鳥取の砂丘ぶどう」をネットで販売してきたわけだけど、ぶどう生産者にズバリ尋ねてみた。「売り上げは伸びましたか?来シーズンもやっていけそうですか?」
「ええ、お蔭様で去年より数字はいいですよ。応援してくれる人がいるので遣り甲斐もあるし、このところ農業に追風も吹いてきた。来年もがんばりますよ。」と笑顔を見せてくれた。これでいいいのだ。こういう前向きで意欲のある生産者を多く仲間として戦略をたてていけばいいのだ。何がなくても、食料は田舎の最大の強みであるとさらに嬉しくなった。
そして、直売所での経験として差別化を図ることの大切さを感じてきた。ブランド化とまではいかなくても「ミセスハナコ」のほにゃらら~(緑大豆、黒豆、富裕柿、干し大根・・・いろいろ)とラベルをつけて店頭に並べる。幸いにも、企画・デザイン力はある。コピーもかける。ひと味つけて、付加価値をつけて、他よりもいくらかでも高く売ることだ。店頭に並べて自宅に帰ってみると、直売所から売り上げ報告のメールが届く。「おお、売れているではないか!やったね!」新参者が結構な売り上げを出している。うれしくなって、次はこれ、あれとアイデアが湧いてくるというもの。
「干し大根には、干した人参と干ししいたけもプラスしたら?主婦は、大根だけのものとどっちを買うと思う?」(これで他に比べて50~100円は高く売れるというものだ。)と内心ほくそ笑む。
宮崎産の東国原知事のイラスト入りの干し大根が、スーパーで180円で売られているのなら、「ミセスハナコの切り干し大根 プラス 人参、干ししいたけ」は200円で売れる!!ルンルンと袋詰め作業をしている私を見て、「なんだか、楽しそうだな~」とだんながいう。
「うん。楽しいよ~」と私。小規模でかわいらしい半農生活の始まりである。
直売所は、生産者と販売所の双方にとっていい関係だと思う。生産者がつける売価の15%の手数料を販売所に支払う。それだけで、場所と販売の手を担ってくれるのだから、生産者にとっては納得のいく価格が設定できる。昨年、JA鳥取中央は、特産である「大栄スイカ」がドバイへ売り込みに行った。国内で1玉3500円のものが、大富豪のドバイでは35000円になったと鼻息が荒い。では、生産者が豊かになったか?と聞くと、生産者価格は変わらないという。高価なガソリン代と航空運賃が上乗せされ、加えてCO2を余計に排出しただけで、何ら生産者へのメリットはなく疑問だけが残る。これって、正しいの?
結局、生産者が自ら納得のいく価格設定ができる仕組みをつくりあげること。これが、達成感と誇りを持って取り組める農業のあるべき姿だと思う。農家への直接的な所得保障(農協や行政を通していてはダメ)をして将来設計が可能な農業のスタイルを構築することだと思う。農業は、「食料と国土保全」という国家プロジェクトを担う産業だということを、もう一度認識していくことが大事だと思う。
ここ数ヶ月足らずの経験ではあるけど、これからの生き方にも良いヒントが得られたと感じている。生産者、消費者共に、直接販売できる直売所や産直ネットへのニーズが高まるのは当たり前だ。調子が上向いて、ある程度の数字が見込めるようなら、直売所を自らが経営してもいいよねと思うほど。同じような志の生産者が集まって「ファーマーズ・サーカス」ってなテント市場を夢に描いて、さあ、明日もがんばるぞ!!