vol.4
オーガニックブックスみみをすます書店
店長 佐々木 香さんインタビュー
〜私のライフワークバランス・
子連れで出勤しています!〜
御茶の水にある「エコロジーショップGAIA」さんの3階「オーガニックブックスみみをすます書店」では『きゃりあ・ぷれす』編集部が企画制作販売をしている「旧暦美人ダイアリー」を発売当初から扱っていただいており、店主の佐々木さんにも日頃よりお世話になっています。今回のインタビューのきっかけは昨年秋に「オーガニックブックスみみをすます書店」にお伺いした時の店員さんの次の一言でした。「佐々木は産休でお休みいただいてます。でも、来月には復帰しますよ、赤ちゃん連れで。」「え?産休ですか?なになに、たった1か月で職場復帰?しかも赤ちゃん連れで?」産休はもちろん、育休を1年間丸々取るのが当たり前の昨今、産休明けの復帰、しかも赤ちゃんを連れて出勤されるとは!!かなり驚いたのですが、後日前回のエディターズ・アイVol.3でご報告した「平田シェフのお味見イベント」にお伺いすると、確かに佐々木さん、小さな赤ちゃんを抱っこして颯爽とイベントを仕切っていらっしゃいましたよ。子連れ出勤、なんだかカッコよくないですか!!佐々木さんがどんな風にお仕事されているのかお伝えしたいとお話を伺ってきました。
【佐々木 香(ささきかおり)さん プロフィール】
「ガイア」取締役。
「オーガニックブックスみみをすます書店」店主。
大学卒業後システム会社の営業職として3年間勤務。
2005年4月 お店のニュースペーパー「かわら版」の外部スタッフとして「ガイア」に関わり始める。
2006年4月 「ガイア」に転職。みみをすます書店の店主となる。
2007年10月 「ガイア」取締役に就任。
2008年10月 産休に入る。
2008年11月 第1子小春ちゃん 出産。
2008年12月 産休明けから出社。小春ちゃんと一緒の出勤を始める。
2009年4月 小春ちゃん保育園入園。
◆「ガイア」で働き始めたきっかけは?
実は自然食にすごく関心があるわけではなかったんです。「ガイア」も知らなかった(笑)。私は大学を卒業してシステム会社で働いてました。バリバリのシステム営業でした。その頃はコンビニのお弁当も食べるし、カフェのランチも食べるしという感じで。普通のサラリーマンのようにお弁当屋さんにも並んでましたしね。「ガイア」で働きたいという人は自然食に興味があっていろんなお店を見て回っているとか、身体を壊して必然的にという人が多いのだけど、私は普通に食べていても身体への影響もなくて(笑)。その頃から「自分の仕事をつくる」という本を書かれた働き方研究家の西村佳哲さんと仲良くしていただいていて、ある時、その西村さんのお手伝いであるイベントに参加して「みみをすます書店」の前店主と出会いました。そのイベントでは回りの人がみんな「ガイア」を知っていて、「え?「ガイア」知らないの?」って。私は「知ってなきゃいけないの?」みたいな(笑)。
私はもともと書くのが好きだったですね。それを前店主に話したら「今、人足りないんだよ」って。それで当時「ガイア」が発行していた「かわら版」を手伝うことになりました。でも、まだその時は書きたいものが書けるな、みたいな軽いノリでいたんです。そんなとき当時のシステム営業の相手先のお客さんが「転職するなら働いて3年後がいいよ。その1年前には用意をしておいたほうがいい」と、求めてもいないのにアドバイスをしてくださったんですよ(笑)。
でも、それで考えたんですね。システム業界というところは深夜まで働いたり、休日に呼び出されることもしょっちゅうでして。システムが365日24時間稼働しているわけですから、仕方のないことだとは思うのですが。当時は女性はまだ少なかったし、先輩にも結婚はしていても子どもを産んた人はいなかった。子どもを産んだら会社を辞めてとは言われないまでも、営業職から事務職にならざる負えない感じで、それは私のやりたいことじゃないな、と。そのうちに、みみをすます書店の前店主が辞めることになり手を挙げました「私やりたいんですけど!」って。その時は「ガイア」に関わってまだ日も浅かったので、それから1年位はシステム営業をしながら休みの日を利用して「かわら版」を書いてから「ガイア」に入りました。
◆システム会社から「ガイア」へ。180度の転換では?
システム会社は二千人以上社員のいる会社でしたので、何か新しいことをしたいと言ったときもすごく時間がかかるわけです。根回しも必要ですし。また仕事の規模も大きかった。私はテレビ局の選挙速報のシステムなどを担当していたのですが、ひとつのミスも許されない状況で荷が重い。扱い金額も今の「ガイア」で売っている1個何百円という世界とは違って、ちょっと感覚がマヒしてしまうような(笑)。「ガイア」は生活に密着している品物を扱っているので自分の身の丈の商売だという気がするし、何より「ガイア」の代表との距離が近いんです。やりたいことを実現するにも速くできる。働き方も自分で決めることができる。これなら子どもを産んでも続けられるかもしれないと思いました。
◆「ガイア」に入社されて1年半で取締役になられました。
「ガイア」の取締役は社外の人だけだったので、社内を円滑に回すためには社内から見る目も必要ではということで、私に「やってみるか?」と声がかかったんだと思います。またまた私は「取締役って何?」という状況だったのですが(笑)。以前の大きな組織にいた時は、取締役って遠くてしかも大きな存在だったので自分が取締役になるということにピンとこなかったんです。そんな状態でなっちゃって・・・。同世代で取締役になっている人もいないし、イメージがわかなかった。
就任してすぐに株主総会がありまして、「ガイア」の株主総会はなぜかすごく真面目なノリのしっかりした会なんですよ。そこで自己アピールしてよと言われてあせりました。それでもやっていくうちにだんたんと・・・。人が見えていない所を見るし、社内の誰かが苦しくなったらケアもするし。適材適所の人員配置について代表と相談したり、社内が円滑に回るように気を配ることをしています。それからみみをすます書店の店長の他に私が担当している仕事がありましてそれはネット販売なんですね。役員の話が出た時、ちょうどネット通販のリニューアルをしようとしていた時だったんです。それで、役員でいたほうが判断が速いかなと。その立場を利用しようと思ったわけです。もともとシステム会社にいたのでネットショップのしくみがわかるし。それで個人情報の取扱いなどセキュリティ面も強化しました。これからは、お店での直販と卸売りに加えて新たな柱になればいいなと思っています。
◆書店の店主さん、取締役、ネットショップの運営と3つのお仕事を抱えながらも出産に踏み切ることができたのは?
一般には出産の何ヶ月前に産休とって、生まれて何ヶ月後に出社してというルールがあるけど、私はお休みに入るのも復帰するのも人それぞれの体調に合わせてでいいんじゃないかと思うんです。そのタイミングは身体に聴くというか、そういう直観に頼ってやればいいのかなと考えたんですね。それで私がいなくても仕事が回るように体制を整えておくという準備をしておきました。娘は11月2日に生まれたんですけど、9月くらいに10月10日に「あ、私休もう」って思って。次の日から産休に入りました。
◆出産後1か月で復帰されました。早いですね。
友達に聞いてもあり得ないと言われました(笑)。産後は回復も早かったし。実は産む前の産休中もちょっと退屈でした。産んだ後も暇だなあと(笑)。もともと仕事というよりも、趣味の延長上にあるように感じるくらい仕事を楽しんでいたので、仕事をしながら子育てもできるんじゃないの?と思いました。仕事と子育てを分けなくてもやり方次第ではできるんじゃないかと思って。でも、それは私の場合であって、人それぞれ体調によって長く休んだほうがいい人もいるので。私は体調がよかったので早く復帰したけれども、自分がそうすることで、働き方は一つではないことを社内に知らせることができたと思うんです。それでみんなが産みやすくなるといいな、と。でも、ある時思いました。ルールを自分で作るということは自分で考えないといけない。ルールに乗っかるほうが楽なんですね。自分の働き方を考えるってなんて大変なんだろうと思ます。
◆小春ちゃんは生後1か月で出勤したわけですが・・・。
復帰しようと思った時には、生後間もなくだったので子連れで出勤しようか、と。寝てるだけだし、人見しりもまだしないし。ちょうど最寄駅が始発駅になったので座って来ることができたんです。それも子どもを連れてくることができる要因の一つですね。ラッキーでした。仕事の内容も一人でする作業が多いし、自宅でもできるので時間の融通がつきやすいということもありますね。娘は熱を出すこともなく、元気に「通勤」してくれたのですが、私は一回乳腺炎になりました。疲れが溜まってしまったのだと思います。
◆今回の経験でよかったことは?
困った時にまわりのスタッフに教えられたり助けてもらえたことですね。乳腺炎になったときも「なんで私、気分が悪いんだろう?」と最初はわからなかったのです。乳腺炎という言葉は知っていても自分がかかっているとは思わなかったのですが、子育て経験のあるスタッフに教えてもらえました。それが一番よかったですね。もともと私には仕事のない生活が考えられないので、子育てと仕事が両立できたのでよかったです。どんなやり方がいいのか自分で考えて、それを試せる場として「ガイア」はとてもいい職場だと思います。
◆では、反対に大変だったことは?
小春を連れて電車通勤をすること、仕事の能率が落ちたことでしょうか。片手で抱っこして片手でキーボードを打ったり、商品を梱包したりとか。仕事に集中できない分、2倍3倍の時間がかかるし、ミスも出てしまいますね。あと、自宅にも仕事を持ち帰っているので膝の上に座らせて仕事をしているような状態で、生活にメリハリがなくなったことでしょうか。何よりも小春に負担をかけていたと思います。
◆ご家族の応援は?
夫はシステム会社に勤務をしているので夜が遅く、助けてもらえるときはお願いしますが、基本的にはあまりアテにしないように(笑)。私が働くことには理解があり、できる範囲で応援してくれています。
◆ずっと子連れ通勤を続けるのですか?
「ガイア」の代表は連れてくれば、と言ってくれるのですが、大きくなるにつれて通勤も大変になるし、仕事の場では遊び相手をしてあげたりとかはできないし、娘が可哀そうかな、と。幸いにも4月からは自宅近くの保育園に入れることになりました。そろそろ動き出す頃なのでちょうどよいタイミングだと思います。保育園を見学してみて、子どもが育つ時にはその子なりの能力を引き出してくれる環境が大切だと思いました。ちゃんと向き合って、遊んでもらって、しっかり見てもらえるのがいいな、と。仕事も育児も両方いっぺんにとなるとどちらも中途半端になってきますし。4月からは仕事は会社できっちりやって全部終わらせ、家ではしっかり子どもと向き合うようにしたいと思います。
◆女性の働き方についてのお考えを
どうしても「ガイア」で働きたいというよりは、働き方の選択肢を持つことができ、それを実現できるところが魅力で「ガイア」を選んでいます。自分の目の届く範囲、自分で判断して実行に移していくという仕事のやり方ができるということでしょうか。私にとっては職種よりもしっかり仕事をすることで得られる充実感や、仕事を通して自分自身が育っていくことが大切なのです。「ガイア」では新しいことにチャレンジできたり、働き方を自分で考えたりできるのでとてもいい職場だと思います。これからも「ガイア」で仕事を続けながら、子どもは3人欲しいので、また自分なりのスタイルを考えていくと思います。
佐々木さんのライフワークバランス、いかがでしたか?
インタビューは3月末、小春ちゃんとの「ガイア」への通勤生活もあと数日という日に行われました。小春ちゃんはにこにこととても機嫌のいい赤ちゃんで、お母さんにしっかり抱っこされて過ごせたことで気持ちが安定しているように見えました。自ら望む働き方があり、それを実現するために働く環境を自ら整えられているところが佐々木さんのすごいところです。「ガイア」さんは一般の企業に比較すると自由度が高いと言えるかもしれませんが、それができるということは佐々木さんが日頃から努力され、自分の行動に責任を持つということをきちんとされているからこそだと思います。自分にとって居心地のよい環境は決して与えられるものではなく、自ら作っていくものだということを教えていただきました。
佐々木さん、小春ちゃん ありがとうございました!