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   仕事と社会のこれからを考えるリポート&アクションマガジン
         「きゃりあ・ぷれす」vol. 161
            2004・4・7(水)発行
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■INDEX■
【特集企画】天職を探せ 第12回
      「せっけんシャンプー」って聞いたことがありますか?
      『I.c.o private hair salon』ヘアスタイリスト
                        平川愛子さん(後編)

      ◆フリーの「自然派美容師」として働く

      ◆レンタルサロンの閉鎖〜独立を決意

      ◆『I.c.o private hair salon』のオープン

      ◆「きゃりあ・ぷれす」読者に向けてのメッセージ

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◆前編の記事より◆

■両親共に一か所に留まるよりはどんどん外に出ていけ、海外にいきなさい
 という考えなんです。私の妹なども海外の大学に行かされていますし。結
 構、うちの家族は“追い出され型”なんですよ(笑)。

■彼らがベジタリアンなのは、私は単純に野菜が好きなのかなと思っていた
 ら、“反戦”や“平和”の為に肉を食べないんだと聞いて衝撃を受けまし
 た。

■お醤油でもちゃんと熟成されたものを使いなさいと言われたりしました。
 それは、ちゃんとしたものを買う人がいなければ、いいものを作る人がい
 なくなるからって。

■日本で自分が楽しく過ごせない人は海外に行っても楽しくないと思います。
 海外に行ったからといって誰かが楽しませてくれるわけではありませんよ
 ね。むしろ、海外の方が常に自己主張するということを求められます。

■街を歩く子たちがみんな髪を染めたりパーマをしていて、その溶液が配水
 管を流れて川や海に流れていくのだと思うとゾッとしました。
 そのときは真剣に美容師という仕事を辞めようかと思ったほどです。美容
 師の仕事は、髪をわざわざ壊して、それでお金をもらっているんだと思う
 と「こんな仕事、嫌だなあ」と思ったんです。

         (聞き手:コラボレーション編集スタッフ 西口聡子)

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    「せっけんシャンプー」って聞いたことがありますか?
      天職をさがせ 第12回 平川愛子さん(後編)
 ■□■                          ■□■

 平川愛子(ひらかわ・あいこ)さん
札幌の美容学校を卒業後、東京での美容院、ヘアメイク等の仕事を経てカナ
ダで5年間美容院に勤務。帰国後、石けんに出会い、2003年7月に石けんシ
ャンプーやヘナだけを使う自然派美容院『I.c.o private hair salon』を東
京・広尾にオープン。サロンワークだけでなく、手作りコスメのワークショ
ップや、抗がん剤治療中の方へのヘアーケアーボランティア活動も行ってい
る。

『I.c.o private hair salon』
 → http://homepage2.nifty.com/icoroom/
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現在、平川さんは予約人数の関係上新規のお客さまの受付を行っていらっし
ゃいません。ただ、サロンには平川さんと同じ考えをもつ自然派美容師の方
々が他にもいらっしゃいますので、「是非石けんシャンプーを試してみたい!」
「石けんシャンプーのことで相談にのってほしい」という方がいらっしゃい
ましたら、是非i.c.o salonのHPを御覧になり、メールにてご連絡ください。
又、自然派美容師として活動していきたい方も募集中との事です。(2004/7/13追記)
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●フリーの「自然派美容師」として働く
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−国民生活センターのおばちゃんの一言で(笑)、「自然派美容師」の道を
 歩み始められたわけですね。

◆その頃は代々木にあるセット面1台分のスペースをレンタルできるサロン
 でフリーランスの美容師として活動してたんです。そこにお客さんに来て
 もらって、石けんとお酢でシャンプーをやり始めました。お酢の匂いが回
 りに漂うのを気にしながらコソコソしてました(笑)。

−実際に石けんシャンプーを使ってみた感想はいかがでしたか?

◆石けんシャンプーを使い続けていく内にだんだんと「これはいい!」と確
 信に変わっていきましたね。実際に髪が綺麗になっていくんです。髪も綺
 麗になりますが、手の荒れもなくなるのでそれもうれしい発見でしたね。

−石けんに切り替えたときの周りの美容師の方たちの反応はどうでしたか。

◆まず石けんを使うことは否定されますね。それは無理のないことなんです。
 私も昔はそうだったんですけど、美容学校では合成洗剤の教育を受けるの
 で、石けんなんてとんでもないという考えに洗脳されてしまうんですね。
 それはなぜかというと、カラーやパーマをかけた髪はせっけんを使っても、
 ダメージを受けていますからツルツルさせるコーティング剤などが入って
 いる合成シャンプーを使用しないと石けんかすが髪に付いてネトネトにな
 ってしまうんです。つまり、石けんを使うということは、髪を傷めないと
 いうことが前提になるので、髪に対する考え方を転換しなければいけなく
 って、その考え方が今の美容の考え方と違うわけなんです。
 だから話しても「へえ、変ってるね」くらいの反応でした。

−フリーで働き始められた頃の収入はどうでしたか?

◆苦労はしましたね。他でアルバイトもしていましたし。レンタル料として
 だいたい売り上げの半分くらいを支払っていました。ただ、他にたくさん
 の美容師さん達も同じスペースをシェアしていたので、私とお客さんは
 「やっぱり自然派がいいよね」と話している横で他の美容師さんはカラー
 やパーマをやってるわけです(笑)。お店自体は自然派サロンではないの
 で、すごい匂いがこもっていましたね。
 でもお客さんは喜んで来てくれるので、まあ自由にフリーで活動できる場
 所があるだけでもいいかなと思ってました。
 その頃は独立なんて全然考えていなかったですし。

−平川さんのやり方ではシャンプーとカットとヘナがメインのメニューだと
 思うのですが、それだとあまり利益は上がらないんでしょうね。

◆そうなんですよね。だからみんな自然派でやることに興味を持たないんだ
 と思います。ただ私はもう化学薬品などをできるだけ使わずに美容の仕事
 をしていきたいと思っています。月に一度乳癌や子宮癌の方へヘア−ケア
 ーボランティアを行っていますが、やはりとても辛い事ですし、色々な薬
 剤がこのような病気にも関係があると言われている事も気になりますし、
 少なくとも悪影響の疑いがあるものを使うことはもう考えられません。

 私も昔はそうだったんですが、美容院でセールスのノルマがあってお客さ
 んに勧めないといけないんですね。カラーのあとはさり気なくパーマを勧
 めてみるとか。そこは雇われている弱味で、お店側が提案するノルマはク
 リアしないといけないので、私も接客しながらいろいろお客さんに勧めて
 ました。それがすごい嫌で仕方がなかったので、なんとか自然派だけのや
 り方で御飯が食べれるようにならないといけないなというのは思ってまし
 た。

−お客さんはどうやって見つけたんですか?

◆パソコンを買って、2000年からホームページを作って宣伝しました。
 はじめは自己紹介のためのページで「私は自然派美容師でーす」みたいな
 サイトでした(笑)。

 でも、それをみてちらほらと「探してました〜」と言って来る人がいるん
 ですよ!石けんの話をするとすごく感動してくれる。やっぱり価値観が近
 いんでしょうね。2003年の3月くらいまで3、4年くらい、そうやっ
 て代々木のレンタルサロンでフリーランスの美容師としてやってました。

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●レンタルサロンの閉鎖〜独立を決意
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−独立を意識されたのは、何かきっかけのようなものがあったのでしょうか?

◆2003年の3月に代々木のレンタルサロンが閉鎖したんです。そのこと
 を知らされたのは閉鎖の2週間前でした(笑)。突然そんなことを言われ
 てどうしようと思って次の場所を探したら原宿にあったんですが、そこは
 ものすごく巨大なスペースで、フロアに30セットくらいが並ぶような大
 きなところでした。それでトランスの音楽がかかっているんですね。私は
 そういう音楽が苦手で、しかも天井も壁も真っ赤なんです(笑)。自然派
 とは合わない雰囲気だと思いましたし、来てくれたお客さんも目が点にな
 ってるわけです。これはまずいなと思いました。

 そんなわけで原宿のサロンは1か月半で出てしまったので、なんとかしな
 きゃなあと思って焦っているとある日、何かの用事で広尾に出たときにた
 またま不動産屋さんでここ(現在のお店)を見つけたんです。

−その頃には独立を決意されていたんですか?

◆もう自分でサロンを作るしかなさそうだなと、その頃には思い始めていま
 したね。自然派のサロンなんてどこを探してもなかったし、しかもお客さ
 んとマンツーマンでやらせてくれるところもまずないし、その上カラーや
 パーマがメニューにないような美容院ですから自分でやるしかあり得ない
 なあという思いが固まってきてました。自分でやるなら莫大な費用がかか
 るだろうし、借金は嫌だなあと思いましたが、それでもやるしかないんだ
 ろうなあと思っているところに、この物件に巡り会ったんです。

 初めてここを見た時はまだ建物もない状態でした。これからできる予定だ
 と書いてあって、広尾駅から1分だし「ここがいい!!」と思いました。

 うちのお客さんはだいたいが口コミなので、駅からあまり遠いと迷ってし
 まうので、お店をやるなら駅からなるべく近くにしたいと思ってました。
 それでとりあえず不動産屋さんに入って「ここってまだ空いてますか?」
 って聞いてみたら空いていると言われたので、「美容室は可能でしょうか
 ?」とさらに聞くと「可能なんじゃないの」って言われて、場所だけでも
 見ておいでと言われたんですが、まだ建物がなかったんで何もない更地を
 見て「これからどんな建物になるんだろうなあ」と思うしかありませんで
 した。

 それから不動産屋で、「どこにお勤めですか?」って聞かれて「いや私、
 勤めてないんですけど…」と答えると、「はぁ?」みたいな顔をされまし
 た。それで、私のことを詳しく書いた経歴書を用意してくださいと言われ
 たんですね。あと、私がやろうとしていることも書いてほしいと。そうし
 たらそれをオーナーにファックスで送ってみるからと言うんです。それか
 ら夢中で経歴書とやりたいことを書いて送ってもらったんです。そしたら
 オーナーさんがとてもいい方で、「じゃあがんばって」って言って貸して
 くれることになったんです。

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●『I.c.o private hair salon』のオープン
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−店舗物件を借りられることになって、準備の方は順調に進みましたか?

◆もうそれから大変ですよ(笑)。職人さんを頼む余裕はないので、壁から
 天井から泣きながら家族や友人に助けを借りて自分達だけで塗りました。
 床は天然の木材をタイから個人輸入して、張るのは職人さんに頼みました。
 そうすると内装費用が1/3くらいで済むんです。鏡はお客さんで鉄を加
 工するアーティストさんがいたので、頼んで作ってもらいました。

 もう、今考えても恐ろしいですね。何か、とんでもないことをやらかして
 いるのではないだろうか、取り返しのつかないことをしてしまったのでは
 ないかと眠れない日もありました。美容院のスタイルを自然派だといって
 も、メニューがないわけですよ。カットとヘナという天然染料の染めくら
 いしかないんです。人を雇う余裕もないし、マンツーマンで果たしてやっ
 ていけるんだろうかという不安が常にありました。

 それでも、4月に建物がない状態から7月のオープンまで、建物と一緒に
 美容院を完成させていきました。

−いざオープンされた時のお気持ちはいかがでしたか?

◆いざオープンして嬉しかったのは、やっぱり今までのお客さんがとても喜
 んで来てくれたことです。しかも頼んでないのにいろいろと宣伝してくれ
 たんです。企業の新聞にいつの間にか掲載されていたり、自然派のお店に
 うちのパンフレットが置かれていたり。そういうのを見て、新しいお客さ
 んも来てくれるようになりました。

 だんだんとお客さんが増えてきて、そのうち私一人の手に余るようになっ
 てきたので、新しい美容師さんがいればいいなと思い始めたんです。もち
 ろん普通の美容師じゃなくて、自然派のやり方に共感してくれる人を欲し
 いと思いました。ただ、雇う余裕はなかったので、フリーランスで一緒に
 やりたいという人がいれば私はどんどんお客さんを紹介するし、サポート
 もするつもりで募集し始めたんですね。3人来てくれて、今では私を合わ
 せて4人体勢になりました。中の一人は、オーガニックが大好きで、本当
 にこういうサロンを探していたと言ってくれました。

−眠れない日が続くくらいの不安はなくなりましたか?

◆今まで知り合いを含めていろんな人たちを見てきて、独立することはリス
 クが高いなあと思っていました。起業して立ち上げても、潰れた人が結構
 いて、特に今の時代は大変で美容室だと高級なところか安いところしか生
 き残っていけないような流れになってきているので、私のような中間層が
 一番難しいんです。不安はいまだにもちろんありますけど、ターゲットを
 絞るというか「価値観を共有できる人だけでいい」と割り切ってやってい
 くのが楽だし、それが一番いい方法なのかなあと思っています。

−お客さんはどんな方が多いのですか?

◆いろんな方がいらっしゃいますが、NGO関係の人が多いですね。みんな
 すごい頑張ってるし、また私のこういうやり方に対してもすごく応援して
 くれます。うちのやり方だとごまかしがきかないんです。カラーやパーマ
 があれば、固い髪だとウェーブをつけて柔らかく見せることができるわけ
 です。そういうことができないので、素材がむき出しになります。

 だからまずは石けんを3年くらいは使い続けて、髪を無垢な状態に戻すこ
 とをお勧めしているんです。

−3年越しの作業ですか。みんな我慢してくれますか?

◆みんな結構我慢してくれるし、むしろ私の方が教えてもらうほど詳しい人
 もいて、中には石けんを作って持ってくるお客さんもいます。銭湯に行く
 ように石けん箱に入れて来て、「今日はこのオイルとあのオイルをこうい
 う割合でブレンドして来ました」とか言うんです(笑)。うちで使う石け
 んもよく相談させてもらってますし。

 あと、うちのお客さんには納豆や味噌や醤油を自分で作っている人もいっ
 ぱいいます。この前も作り方を教えてもらいました。そういう人たちが集
 まっているので話がすごいディープで面白いですね。隣でカットしてもら
 ってるお客さんの話を聞いていて、カーテンをめくって「ねえ!」とかよ
 く言ったりしますよ(笑)。今まで普通の美容院に勤めていた頃は「最近
 映画観ました?」とか差し障りのないことを聞くことしかできませんでし
 た。どういうお客さんか分からないし、プライベートに踏み込むわけにも
 いかないですし。ここだと根底に流れている価値観が共通なので、最近だ
 と狂牛病についての話とかしますし、フェアトレードについて、農業につ
 いての話もします。

 お客さんの女の子には農業をやってる子が多いんですよ。みんな日本中の
 畑を巡って帰って来るので、顔も真っ黒なんですよ(笑)。みんな活き活
 きした顔をして「今回はこんな農法を学んで来た」とか言うので、私もす
 ごい刺激を受けています。

 ここに来るお客さんで、広尾に住んでいる人っていないかも知れません
 (笑)。ひょっとしたら渋谷区の人もいないかも。近所の人は「ここって
 何やってるんだろう?」って思っているのかも知れません。

 わざわざ遠くから来てくれるお客さんが多くて、中には小田原から来てく
 れる方もいます。そういったお客さんが自主的に宣伝してくださるんです
 ね。「〜〜で見ました」って言って来るお客さんがいて、私には全然覚え
 がないんです。どうやらいろんな場所にうちのチラシを置いてくれたりし
 ているみたいなんです(笑)。

−サロンをオープンされてからの“働き方”には満足されていますか?

◆もう最高!ですね(笑)。お金儲けしたいんだったらこういう方法はやめ
 ておいた方がいいと思いますけど、とりあえずそこそこ食べていければい
 いんだったら、この仕事はお客さんと話し合えるし、身体に悪いものを使
 う罪悪感を持たないでいいし、何よりお客さんがすごく喜んでくれるのが
 やり甲斐があります。あと、お客さんとの情報交換もあったりして楽しい
 ですね。

 現実的にいろいろと難しいことはありますけど、何とか家賃なんかを払っ
 ていければいいやと思ってやっていますから。だからビジネスじゃないん
 でしょうね。ビジネスなら利益を上げていくことが必要とされるのでしょ
 うけど、そういう段階にありません。「今月も無事に月末を迎えたな」と
 言って次の1か月をスタートさせているような感じです。

−今後はどういうことをやってみたいですか?

◆現在3月と4月に手作りコスメのワークショップをやっています。ファン
 デーションや口紅も作れるんですよ。このようなワークショップをこれか
 らも続けていきたいと思ってはいるのですが、まずは様子をみて決めてい
 こうと思っています。
 又、月1回の抗癌剤治療中の方へのヘア−ケアーボランティアは以前から
 ずっと実現したかった事なので自分のお店を持つことができ、ここで行え
 るようになったのが本当によかったと思っています。レンタルスペースを
 借りている頃も行いたかったのですけど、やっぱり周りに他の人がいるの
 は患者さんには辛い事です。自分でお店を持てば、定休日なら私しかいな
 い状態ですし彼女たちも、少しは安心してきてくれています。

 この活動は時間的に現在は月1回が限度なのですが、ずっとこれからも続
 けていきたいと思っています。

−ヘアケアに関して、こういうことに気をつけてほしいということはありま
 すか?

◆髪ってパーマやカラーをしないとすごい綺麗なんですよ。だからもっとみ
 んな髪を大事にして欲しいと思います。髪も身体も大切にして欲しい。私
 もこのままじゃいけないと危機感を感じています。まず美容師が変らなき
 ゃ、一般の人はもっと分からないじゃないですか。「私すごくいいシャン
 プー使ってるの。美容師さんが勧めてくれたの」っていう子がいますよね。

 美容師の言いなりになる部分ってあると思うんです。影響力という意味で
 美容師の責任は重大ですよね。美容師もただお店側から言われたままにお
 客さんに勧めていたりするんです。美容師さんも時間がない人が多くって、
 新聞を読んだりしていろいろな情報を仕入れた方がいいんですけど、意外
 と何も知らない人が多かったりするんです。

 あと、これは私が海外に出たから思うことなのかも知れませんが、日本人
 にしか出せないオリエンタルな可愛さってあると思うんです。日本に帰っ
 て来て、若い子がみんな茶髪に染めているのを見たときに「どうしてみん
 な外国人の真似をしたがるんだろう」って思いました。それは個人の好み
 であれば尊重されなければいけないと思いますが、テレビやファッション
 雑誌を使って企業が発信する情報を鵜呑みにしていることが多いように思
 います。企業としては髪を染めてくれて、その上パーマまでしてくれれば
 今までよりずっと儲かりますから。

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●「きゃりあ・ぷれす」読者に向けてのメッセージ
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−「きゃりあ・ぷれす」読者の中にはこれから天職にたどり着きたい、とい
 う人もいると思うのですが何か平川さんからアドバイスを頂けますか?

◆無責任なことは言えないけど、私の場合は確信というか、自信というか
 「いや、行けるでしょ!」という何かが確かにあったんですよ。フリーラ
 ンスでやっていこうと決心したときや、独立したときもそうだし、自然派
 でやっていこうと思ったときも直感みたいなものがありました。ただ、冷
 静に現実を見つめることを忘れてはいけないですね。夢をただ追うだけで
 はなくて、現実的な視点を伴って見えてないと挫折しやすいと思います。

 海外に行くからといって、青い目の友だちに囲まれて毎週パーティーがあ
 って楽しいだろうと思って行くと、実際はものすごい孤独を感じたりする
 わけですよ。ことばも分からなかったりすると尚更です。現実は思うほど
 甘くないんですが、「こうなりたい」と思う自分を持つことはとても大事
 なことです。

 私の「こうなりたい」は結構、身近な人だったりして、うまく重ねること
 ができました。あまり壮大な理想を掲げると、そこに辿り着くまでが大変
 すぎて挫折してしまう恐れが大きくなるんじゃないでしょうか。

 大事なのはやはり視野を広げることですね。きっかけとして海外に出てし
 まうというのもひとつの方法であるし、そこまではできないのであれば、
 何でもいいと思うんですよね。習いものをするとか。うちのお客さんで、
 棚田の田植えを手伝って、収穫のときにも行って、ということをしていた
 り、日本古来の真綿を保存する活動で、月に1回種を蒔きに行ったり、そ
 れをまた収穫しにいったり、何でもいいと思うんですよね。仕事は仕事で
 大切にして、それとは別に“ライフワーク”を見つけるといったこともひ
 とつの方法ではありますよね。

 海外に行こうかどうしようか迷っている人がいたら、あまり無責任なこと
 は言えませんが、行った方がいいのではないかと思います。行けば自分が
 どれだけ小さな存在かが分かります。みんな私のことなんて気にしてない
 んだから何やったっていいんだという開き直りができるようになれば、そ
 れはとてもいいことだと思います。

 病気で苦しんでいる人もたくさんいる中で、せっかく元気な身体があって、
 何でも挑戦できる機会があるのであればそのチャンスを活かさないともっ
 たいないと思いますね。(了)

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