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仕事と社会のこれからを考えるリポート&アクションマガジン
「きゃりあ・ぷれす」vol. 156
2004・2・4(水)発行
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■INDEX■
【特集企画】天職を探せ 第11回
時代が求める本物の食をあなたに
(有)ナチュラルハーモニー代表
河名秀郎さん(後編)
◆本物ではない!?私たちの食
◆衣食住をトータルに変えていく
プランツへの発想、そしてこれから
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姉の死がきっかけとなった“決意表明”を経て、無肥料栽培野菜の卸売・販
売、そして衣、食、住全般にわたるナチュラルライフスタイルを提案するシ
ョッピングモール「インターナショナルガーデンプランツ」のプロデュース
を手掛けるようになった河名さん。後編では、私たちを取り囲む現代の食を
めぐる様々な問題、そしてそれらをトータルに解決する場としての「プラン
ツ」について話が及びました。
(聞き手:コラボレーション編集スタッフ 木村麻紀)
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時代が求める本物の食をあなたに
天職をさがせ 第11回 河名秀郎さん(後編)
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河名秀郎(かわな・ひでお)さん
無農薬野菜の卸売・販売、自然食レストラン経営などを手掛ける(有)ナチ
ュラルハーモニー< http://www.naturalharmony.co.jp >代表。衣、食、住
全般にわたるナチュラルライフを提案するショッピングモール「インターナ
ショナルガーデンプランツ」の総合プロデュースで注目される。最近では、
肥料を一切与えずに作物が自然に育つ力を引き出す「無肥料栽培」に取り組
む農家をネットワークする「芸術栽培研究会」や、味噌やしょうゆ、納豆な
ど日本食の素晴らしさを代表する天然の醗酵醸造食品の作り手を発掘する
「菌匠会」などの活動を通じて、命の源としての本物の食を追求し続けてい
る。
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●本物ではない!?私たちの食
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河名 僕はね、人間の自然、つまり五感を信じて物を選んでいくことが21
世紀を生き抜くコツではないかなと思うんです。そして、無肥料栽培
こそが自然食だと思っています。でも、今の一般的な自然食ってちょ
っと違ったところを見ている。欧州でも自然食やオーガニックフード
が沢山ありますが、ちょっと視点が違うと思うんですよね。
−視点の違い、ですか。どういうことでしょう
河名 物理的に健康な状態を追及しているだけで、生態との調和の中で判断
された健康とはちょっと違うということです。ですから、根本的な解
決にはならないと思います。代表的なのはサプリメント。あれは人類
を滅ぼすんじゃないかと、一番危険な物質であるということに何故気
付かないのかと思ってしまいます。
−サプリメントが危険というのは
河名 自然界は多種多様で単一なものはありませんが、サプリメントは単一
にした結果、つまり一番自然に反しているんですね。例えば、レモン
にはビタミンCだけでなく多種多様な栄養素が入っているからビタミ
ンCが生きるんです。ビタミンCは今、肌にいいとか何とかでクロー
ズアップされています。そこで、それだけを抽出したり、さらには科
学的に作り出したものが出回っています。面白い話を聞きました。ペ
ットボトル入りのお茶やジュースにビタミンCやビタミンEって入っ
てますよね、酸化防止剤として。何故かと言うと、酸化を防ぐには酸
素と一番化合しやすい要素を加えればいいからです。それがビタミン
CでありEで、これによってお茶は守られます。しかし、ビタミンC
は瞬時に酸化ビタミンCに変わります。酸化ビタミンCについては研
究が進んでいませんが、医者によってはかなり危険だと言います。で
は、今度はお茶の中にレモン汁を入れてみましょう。ちょっと味が変
わるかもしれませんが。で、やはりビタミンCは酸化ビタミンCにな
りますが、レモンの中には酸化したものを分解する酸化分解酵素とい
うものが含まれています。レモンの中で完結できるんですね。
こうして見ると、言葉は悪いですがプロテインだコラーゲンだポリフ
ェノールだと細かく分けてサプリメントや健康食品として売るメーカ
ーに、我々はだまされているんだと思いませんか。今の人間社会はビ
ジネスで成り立っていて、皆が互いにだまし合って会社を存続させる
ためにやむを得ずやっている行為が集合体となって私たち消費者に襲
い掛かっている状態だと考えます。ただ、皆さん口ではいいこと言っ
てますよね、あれは体にいいとか。でも、メーカーもこれは本当に良
いものだと信じてやっているかもしれない。だとすれば非常に軽薄な
知識だと言わざるを得ないし、本当に皮肉なことです。ファーストフ
ード的に手軽に健康を手に入れたいという風潮がありますが、健康を
欲することが結果として老化を早めているのであれば早く食い止めて
あげたい。やはり、食品などの日ごろの選択から変えていくのが一番
いいと思います。
−なるほど、現代人にとっては耳の痛い話です
河名 もう一つお話しましょう。僕たちは日本の食の素晴らしさを代表する
天然の醗酵醸造食品の作り手を発掘してネットワークする「菌匠会」
というものを作って活動しています。バイオテクノロジーで世界トッ
プクラスのデンマークが注目しているのは、実は日本にしかいないこ
うじ菌なんです。こうじ菌はどの菌よりも酵素を出す力が強く、日本
人はしょうゆや味噌、酒などを通じて酵素を摂取している、だからす
ごいといわれてきました。しかし、バイテクによる菌の操作、つまり
より多くの酵素を出させるように改造されるようになりました。本当
にいいんでしょうか。
1980年代に起きたトリプトファン事件って覚えていらっしゃるで
しょうか。トリプトファンという必須アミノ酸が体にいいということ
で、遺伝子操作した菌にトリプトファンを生成させ、それを抽出した
ものが健康食品として売られていました。ところがこれを飲んで30
人以上が死んだんです。調べて見ると、操作された菌が猛毒も生成し
ていたことが分かりました。こうした急性毒性はすぐに結果として表
面化しますが、例えば私たちが日常的に飲んでいるビールやワイン、
発酵食品の菌のほとんどが純粋培養で人為的につくられたもので、い
つ急性毒性として出てくるか分からないし、出ないまでも慢性毒性は
あるかもしれません。
菌の操作って自然の冒涜だと思いませんか。まあクローン牛まで出る
世の中ですから仕方ないのかもしれません。それでもいいという人は
いいんですが、僕はいや。そうした食品を食べてサイボーグにはなり
たくない。また、そうした食品と精神が荒れることとの関係も指摘さ
れていますね。もっと世の中全体を捉えて考えないといけないと思う
んです。こう言うと、うるさいって言われるんですよ。でもね、そう
いう人たちに菌匠会の味噌を食べてもらうと「何でこんなにおいしい
の!」って驚くんですよ(笑)。
この味噌は、純粋培養ではない「天然のこうじ菌」を活用するという
日本ならではの技術で作られています。でも、この技術で作っている
のは日本では数えるくらいしかいないと思います。日本のほとんどの
蔵元やメーカーは純粋培養された菌を買ってきて作っている。
確かにそれを使うと均一な味のものができ、失敗が少ないといわれて
います。天然こうじ菌では、樽ごとに微妙に味が違ってきます。それ
を個性として優遇するか、品質が不安定だとして拒否するかは、意識
の持ち方の違いです。
僕は個性として慮りますが、大手メーカーにとってはダメなんです。
うちの店では藁納豆を扱っていますが、藁ごとに味が違っていいんで
す。でも一般的には逆です。「あれ、味が違うじゃない」なんて怒ら
れてしまいます。だから僕は予め、消費者の皆さんに「味が違います
よ。それぞれの個性を楽しんでください」と言っています。納豆なら
「夏場は糸引きが甘いですよ」「納豆の旬は冬ですから」と言うと、
皆さんびっくりなさいますね。一般には一年中同じですから。ちなみ
に、日本で「藁に生息している納豆菌」で納豆を作っているのは、今
や私の知る限りでは1件だけです。驚きですよね。藁に包んでいるも
のも他にも見かけますが、あれは容器として藁を使っているだけで、
納豆菌を人為的に入れ込んでつくっているようです。ただ、人為的純
粋培養の菌も社会の流れの中で生まれてきたものですから、意味もあ
り否定はできません。ただ、あまりに偏りすぎたことは事実だと思い
ます。日本全国、同じ味って変ですよね。もっと地方色を活かしたそ
の地域ならではの天然の菌を活用していただきたい、そして、それぞ
れの地方の個性的な味を楽しみたい。さらには、それを誇りにしてい
ただきたい。それが私の願いでもあるんです。
醗酵醸造食品は時間をかけることが命です。味噌も1,2週間で作っ
ているメーカーがありますが、本当の味噌ではない。味噌を作るには
最低10ヶ月かかります。しょうゆなら1年から3年という月日を費
やします。その時間の中で、微生物が様々なものを作り出した結果、
味噌やしょうゆになるんです。これが長期熟成ですが、実はこれが普
通なんです。わざわざ長期と言うのは、即醸という相反する商品が日
本のスーパーマーケットに並んだからです。その結果、栄養がない代
わりに味も乗らないのでアミノ酸などの添加物を足すんです。しょう
ゆでも、安いものには化学調味料やカラメル色素まで入っています。
最近では有機丸大豆のしょうゆも出てきましたが、それでも醸造期間
が短いということには変わりないのです。だから本物ではない。食べ
物って栄養とかを意識しないで、「おいしいな」と食べた結果、知ら
ない間に栄養になって自分を生かしているはずだったと思うのです。
でも、現在の食べ物は全然自分の役にたっていない気がする、もしか
したら、かえって悪くなるかもしれないんです。
こうした間違った循環を断ち切れればなと思います。
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●衣食住をトータルに変えていく プランツへの発想、そしてこれから
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−さて、こちらのお店「インターナチュラルルガーデンプランツ」ですが、
こういうお店を作ろうとしたのはどのような発想からだったのでしょうか
河名 20年前にトラックで野菜の引き売りを始めた頃から店作りのビジョ
ンはありました。食だけで100%ではないということは重々分かっ
ていました。つまり生活だなと。立体的に捉えていかないと偏ってし
まうなと思っていました。自然食フリークの人が必ずしも健康でない
のと同じです。生活上の色々な喜びを様々な角度から体験できればい
いなと思ったんです。例えば畳一つ取っても、着色料つきで防腐剤つ
きのものと、無農薬のい草の上とでは、寝転んだ時に全然違うことが
分かるんです、居心地が違う。着るものも同じです。化学繊維よりは
温かみのある天然繊維のほうが気持ちがいいわけです。五感が喜ぶも
のを自然界の一部として自分に与えたい、自然界で生かされている喜
びを立体的にかみしめたかった。日本は欧州に比べれば植物の国だと
思いませんか。木や畳、紙、綿、麻、絹です。食べ物も野菜ですね。
すべて植物です。植物の力を享受しないと生きられない民族であるは
ずなので、もう一度植物にフォーカスして、植物への感謝と尊敬の念
をもう一度取り戻さなければこれからの時代はダメなのかなと思って
います。そうした意味を込めてこの場所をPlants(プランツ、植物)
と名づけました。
−そうでしたか。私は現在ドイツに住んでいるんですが、プランツのように
衣食住に必要な環境配慮型の商品が一度に手に入るスーパーマーケットで
毎日買い物をしています。日本ではエコロジカルな作物や商品を買おうに
も、そういうお店がスーパーのように日常的ではないので結構大変です。
どうして日本ではこちらのお店や私がドイツで使っているエコスーパーが
少ないのでしょうか
河名 これらの作物や商品は、情報が公開されているというのが前提になり
ます。まず流通側が全ての生産過程を公開しようという勇気を持たな
い限り、そうした形態のお店は広がらないでしょうね。日本でも食品
の生産・流通過程を辿ることができるトレーサビリティーというシス
テムが作られようとしていますが、そのスピードは遅々としています
し中途半端です。肝心なところがわからない。今までは隠していた、
隠さずにはいられなかったのだと思います。私たちの店では、より深
い情報公開をすべく努力しています。それが消費者の信頼につながっ
ているようです。このあり方を真似してもらえたら、もっとお店が増
えるんじゃないかな。
また、日本の場合、消費者への情報操作や知識のなさが色々なことを
鵜呑みにさせているという現状はあると思います。あえて情報を探ろ
うとも思わない。よく言えばお人好しなのかな。ドイツの場合、消費
者の意識レベルが高いかどうかは別として、僕たちが扱っている作物
のような環境配慮型のものに回帰する方向にあることは明確だと思う
んです。この点が日本とは大きな違いかなと思いますね。日本でこの
規模でやっているお店はここしかないと言われていますが、資金力の
ない中で必死にやっている姿そのものであって、大きなビジネスにす
るにはとうていおぼつかない現状です。ただ僕にも夢があってね、せ
めてこういうスケールの拠点を各県一つは作りたいと思っているんで
す。
−でも、そろそろ時代がついてきたという感じではないでしょうか
河名 売上げは年々伸びてますね。でね、このお店を見て3社ほどが僕たち
もやりたいのでフランチャイズにできないか、と言ってきてくれてい
ます。いいですよね。もしそうなれば、僕はその県内の生産者を見て
歩いて、作物を店に供給できるよう生産指導をし、その地域にある味
噌やしょうゆの蔵を復活させて、県内で完結する仕組みを作る手助け
が出来る訳ですから。それがある意味で地方を強めることにもなるで
しょう。地域興しという意味合いも潜んでいるんです。
それから、食べられない食べ物が溢れる中で、食に関する正しい情報
を提供するのも僕たちの責務ではないかと考えています。以前に「買
ってはいけない」という本が話題になりましたが、今度は「買ってい
い」ものを紹介することはできないかと色々と企画しています。
食べられない食べ物が溢れ、アレルギーが増加していることなどを考
えると、このビジネスがある一線を超えるかもしれないという予感は
持っています。 (了)
【ナチュラルハーモニーのサイト】
http://www.naturalharmony.co.jp/
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