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働く女性のためのキャリアプランニング情報誌
「きゃりあ・ぷれす」vol. 97
2002・1・30(水)発行
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■INDEX■
【特集企画】「天職を探せ」
■第1回 パク・ジョアン・スックチャさん(後編)
(ワーク/ライフ・コンサルタント)
・海外で見たことを伝えるために、2度目の退職を決意
・やりたいことをやるために準備すること
・楽しく、充実して働くためには、企業も個人も意識を変えるべき
・自己の責任でスキルアップしなければ、望む結果は得られない
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第1回 パク・ジョアン・スックチャさん(後編)
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■プロフィール■
パク・ジョアン・スックチャ (Joanna Sook Ja Park)
有限会社アパショナータ代表取締役
ワーク/ライフ・コンサルタント
日本生まれ、韓国籍。米国ペンシルバニア大学経済学部卒業。
シカゴ大学MBA(経営学修士号)取得。米国と日本で米国系企業に5年間
勤務。その後、韓国延世大学へ語学留学。日本に戻り米国系運輸企業に入社。
同社にて日本、香港、シンガポール等、太平洋地区での人事、スペシャリス
トおよび管理職研修の企画、実施を手がける。
2000年2月に退社。働く人々が、やりがいのある仕事と充実した私生活を持
てるように企業での働く環境を変えていきたいと願い、同年12月にワーク/
ライフ・コンサルタントとして独立。
【執筆および記事】
「人材・雇用の流動化などに伴う新たな企業・社会システムの構築報告書」
第2章 米国におけるワークライフバランスの取り組み
(財団法人自由時間デザイン協会 2001年3月発行)
「私生活と生産性」(アエラ 2001年5月21日号)
「Work/Life hangs in balance」
(日経ウィークリー 2001年7月9日号)
「ワーク/ライフ・バランスで築く新人事戦略’」
(JMAマネージメントレビュー 2001年8月号)
「ワーク/ライフ・バランス」 (女性と仕事ジャーナル 2001年8月号)
「働き方,生き方全予測」個人篇回答者
(プレジデント 2002年2月4日特別増大号)
特集「子供を産んでも働き続ける」コメンテーター
(日経WOMAN 2002年3月号・予定)
「ワーク/ライフ・バランス特集」 (企業と人材 2002年3月号・予定)
「ワーク/ライフ・バランスを考える」
(くらしと教育をつなぐWe 6月号)
◆ワーク/ライフ・バランスとは◆………………………………………………
「ワーク/ライフ・バランス」とは、やりがいのある仕事と充実した私生活
のバランスをとりながら、個人が持っている能力を最大限に発揮することで
す。企業での「ワーク/ライフ・バランス」への取り組みの目的は、社員が
それを達成できるようにサポートすることです。米国では人事分野として発
展しました。
◆ 前編の対談より◆…………………………………………………………………
■ (最初に勤めた会社の)居心地は良かったんです。上司もいいし人間関係
も問題がなく、何の不満もなかったんですけど、「これって本当に私のや
りたいこと?」と考えたときに違うなと思って。(中略)居心地のよさが
長く続くと、自分がフルに満たされていないと感じて、「何かしなくちゃ
いけない」と思うようになるんですよ。
■「絶対に好きなことを仕事にする」と会社を辞めて就職活動をしてみたら、
考えが甘いということもあったかもしれませんが、現実は自分が思ったの
とは違いました。(中略)トライしてみないと「あ、こんなものか」とい
うことも分からない。でも、想像していたことと現実が違ったというだけ
で、がっかりしたわけではありません。
■ 私も日本だけにいたら、ほかの人たちみたいに子供をあずけることに罪悪
感を持ったと思います。社会にも男性にも“家事や子育ては女性の仕事”
という意識があるけれど、女性自身にも「妻だから母親だから、あたしが
やらなきゃ」という意識がある。本人がそういう意識から解放されるべき
だと思います。
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■海外で見たことを伝えるために、2度目の退職を決意
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宮 結局、2度目の会社になる米国系運輸会社には何年いらしたんですか。
パ 8年半いました。辞めたのは2年前の2000年の2月ですね。
宮 そこで見切りをつけたというか、形を変えようということで辞められた
のですか。
パ 最初の会社を辞めた時と同じような理由です。今やっていることという
のは、私が本当に心の底からやりたいことではないという思いからです。
以前は美術の仕事をしたいという思いがありましたが、今は「ワーク/
ライフ・バランス」です。
今は、海外で見たことを日本の人に伝えるのが自分の使命だと思ってい
ます。そこまで自分たちを苦しめなくても、考え方を変えれば仕事も家
庭のことももっと楽しくできる、お互いが協力しあえば、もっといい夫
婦関係や家族関係が築けるという思いがあります。
それでも、会社を辞めるときには金銭的なことで一番悩みました。お給
料に男女差のない会社だったので。
宮 8年半いらしてキャリアを積んで、重要な位置にもいらしたのであれば、
お給料の問題も大きいですよね。会社の中では「ワーク/ライフ・バラ
ンス」のようなものをやりたいという提案はしなかったんですか。
パ それはしなかったですね。でも、それ以外のやりたいことは提案しまし
た。フランクリン・コビーの「7つの習慣」とか。私のやりたいことと
会社の方向性が違ったということもあって、企画を書いてもなかなか通
りませんでしたが。会社はプロジェクトマネージメントといったものを
やっていたんですが、私はもっと人間の価値観などといったソフトなも
のがやりたかったんです。
宮 考え方とか。
パ そうです。仕事に対する考え方などを身につけたうえで、次にスキルを
磨くのがいいと思うんです。でも、(その米国系運輸会社は)とてもいい
会社で、上司も良い上司でした。私は上司が常に外国人だったので、仕
事と私生活のバランスには理解を示してもらえたんです。子供が病気の
時なども、その日に私がやらなければいけない仕事がなければ休んでも
問題はない、というように。
イギリス人の上司とシンガポール人の上司には、年間のスケジュールを
たてる時に、「まずバケーションのスケジュールを組みなさい」と言わ
れました。バケーションの間に仕事のスケジュールを入れなさいと。
宮 休みのスケジュールは早めに立てた方が仕事をすすめる計画を立てやす
いんですよね。急に休みを取ったりするより、ずっといいと思います。
パ 私も最初は「1年間の予定なんてわからない」と思っていたんですが、
実行してみたら、かなりフレックスにできました。
宮 そのような恵まれた状況でも、「このままでは物足りない」と思ったん
ですね。
パ 「このままじゃ人生後悔する」って。不満がなかったんですよ。そこそ
こ満足していたけどフルに満足していなかったという、前と同じ状況で
す。仕事がおもしろくないとか、イヤな上司であれば辞めやすいの
に、かえって飛び出しづらかった。
宮 8年半いらっしゃるうちの、何年ぐらいたったあたりから、そう考える
ようになったんですか?
パ 2人目の子を妊娠したあたりの時期です。もう少しソフト的なことをや
りたいかったので会社を辞めようと思っていたのですが、妊娠して辞め
られない状況になってしまいました。結局2人目の子供が1歳半の時に
辞めたんですが、辞めるまでの半年間で、その後の生活費のことを考え
て貯金をしたり、辞めた後の仕事に必要なリサーチなどをしました。
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■やりたいことをやるために準備すること
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宮 最初の会社も、次の会社も「違うな」という気持ちはあっても、「次に
これをやろう」という明確なメドはついていない時に辞めているのです
が、メドは辞めてからたてるタイプですか?
パ なんとか収入が確保できる仕事は事前に用意しました。すごく好き、自
分のやりたいこととマッチしているというのではないけど、ある程度の
収入にはなる。「ワーク/ライフ・バランス」とどう兼ね併せていこう
かという状況でした。
宮 その時には「ワーク/ライフ・バランス」セミナーでやる優先順位づけ
のようなことは実践されたのですか。
パ 全部やりました。自分が本当にやりたいことをするには何が必要で、何
を我慢するか。たとえば、半年間は収入がなくてもやっていけるとか。
会社を辞めたら入ってくるお金は今のお給料より下がるけど、ある程度
貯金もあったし、ゼロにはならないと思いました。
実際に収入はいくらぐらいになるかと考えた時に、収入をあげるよりも
コストダウンの発想に変わりました。普段の生活水準を下げるとか、い
らないものを買わないとか、そういうものを手放していったら今までよ
りも少ないお金で生活できると思うようになったんです。
宮 どれくらいの期間であれば、なんとかなるといういうメドをたてたので
しょう。
パ まあまあ貯金もあったし、夫とも生活費を半分づつ負担して生活してい
ましたから、金銭的には半年から1年くらいです。
宮 転職するときというのは、なかなかその一歩が踏み出せないこともあり
ます。特に、いい環境であれば、その一歩を踏み出すのが大変だったり
もすると思うのですが。どういうことが原動力だったのでしょう。ある
時、これは絶対に違うなと思ったのですか?
パ 私は「絶対に人生を後悔して死にたくない」「明日死ぬことになっても
“ああしておけばよかった”と言いたくない」といつも思い続けていた
んです。
でもある時「このままこうしていたら、明日死ぬことになったら後悔す
る」と思いました。今、やりたいことをやるために会社を辞めることが
後悔しない道だと。だから今は後悔していません。
宮 会社にいるときも辞めた時も、そのつど後悔しないで生きてきたという
ことですね。
パ 「(後悔しないで)生きていきたいなあ……」ということですよね。会
社を辞める前は、いつまでも悩んでいましたよ。収入って大きいじゃな
いですか。子供も2人いますし。夫ひとりで私たち全員を養うのは大変
だという現状がありますから。
宮 次の仕事に向けて準備はするけれど、はっきりメドが立つ形ではなくて
も……。
パ ある程度はメドが立ちました。最初はステップダウンになるだろうけれ
ど、以前の収入より高くなるというケースはたくさんあります。
私は、やりたいことをやりながら、生活ができるだけの収入を得られる
ようにしないと、皆、やりたいことを仕事にしなくなってしまうと思う
んです。今は、やりたいことを仕事にしたら、ボランティアではないけ
れど100〜200万円でハッピーに生きていかなければいけないという状態
ですよね。やりたいことを仕事にすると、「だったら収入は少なくても当
たり前」と思われていますよね。それは違うのではないでしょうか。
やりたいことを仕事にしても生活できるようにするにはどうしたらいい
か。その解決策をみつけていくべきです。実際に私がそうすることがで
きれば、他の人も「私もやってみようかな」と思うんじゃないかと。
宮 それでも、「お金がもらえないのは誰かのせい」というわけではないです
よね。
パ そうですね。そのためにはスキルアップしないと。
宮 自分がやりたいことをしてお金を得るには、自分の努力が必要。すべて
が自分ですね。
パ そうですね。だから私はこの道に関してエキスパートになりたいという
思いがあります。それには、情報収集にしても、勉強にしても、リサー
チにしても必死にやっていますから。たとえば、私が辞めたときのワー
ク/ライフ・バランスへの取り組み状況と、今ここまで不況になった場
合のワーク/ライフ・バランスへの取り組み状況とでは違いますよね。
私はそういった最新の状況も把握しています。
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■楽しく、充実して働くためには、企業も個人も意識を変えるべき
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宮 「ワーク/ライフ・バランス」を広めることを仕事にしようというのは、
辞める前に、ご自身のテーマとしてあったのですか?
パ 具体的にはありませんでした。自分のライフバランスをどうしたいか考
えたり、キャリアデザインなどのセミナーを受けたりはしていましたが。
資格を取ることも考えました。キャリアと私生活を充実させる部分で何
かしたいと思い、会社を辞めてからコネクションを作ったり、具体策を
練ったりもしました。
宮 日本のサラリーマンとは少し違うとは思いますが、いわゆる固定賃金を
保証された会社に勤めている時と、現在ご自身でフリーランスというか
個人事業主となってからでは、何か気持ちは変わりましたか。
パ とても開放感があるし、もう2度と会社に戻れないと思います。1億円
積まれても戻れないと思うくらいの自由さを感じます。自分らしくやり
たいことができる“自由”というものが、多分、私のなかの優先順位と
してはとても高いのだと思います。
それに私の場合、会社を辞めてから会った人たちの方が輝いている人が
多いんですね。会社にいる頃は、今後の夢や自分のやりたいことについ
て話せるというのはなかった。今は自分のやりたいことをバンバン話せ
て共感してもらえて、サポートしてもらえる。すごく自分の世界が広が
りました。
宮 パクさんは外資系の会社にお勤めでしたから、日本の会社よりは組織的
なプレッシャーというのは少なかったと思いますが、それでもやはり違
うものですか?
パ 時間的にしばられたり、社内の政治的な問題もあるでしょうし。
宮 そういうのはどうして生まれるんでしょうね、企業には。不思議な感じ
がしませんか。
パ やはり、自分の利益を考えるんでしょうね。ポジションを守ろうとか、
出世したいとか。
宮 今の時代は、給料をもらっているというのは不自由なんじゃないかと思
います。自分でリスクを負うということのなかに、すがすがしさが生ま
れるのではないかと思ったりもするのですが。
パ 私が人生は公平だなと感じるのは、やった分だけ自分に戻ってくるから
です。これだけリスクをとれば、これだけ自分にバックするというよう
に。たとえば勉強であれば、一生懸命学べばそれだけ自分に身について
くる。それならば、失敗しても後悔はないじゃないですか。
宮 パクさんが「ワーク/ライフ・バランス」のなかで言っているように、
すべては自分であると。誰かのために何かをするのではなくて。
パ 自分のためにやっていることでも、結局それが社会のために役立つとい
うことですよね。世界的な傾向として共働きが増えているということは、
ほとんどの人が働いている状態なんです。“働きたい”か“働かなきゃ
いけない”理由はどちらでもいいと思います。ただ、働いている時間が
あまりにも長すぎる。どうせ働かなくてはいけないのなら充実していた
い。もっと楽しく、やりがいがある環境を作りたいと思います。そのた
めには企業が変わらないといけない。
宮 パクさんは、いい企業にいらしたのに辞めたらもっと自由になった。自
分がリスクを負う代わりに自分のやりたいことができるわけです。でも
従業員というのは、会社の中でなかなかそうはできないですよね。
パ 多くの人が会社で働いています。私のように「好きなことがあるなら独
立すればいい」ではなくて、会社の中での方が能力が発揮できる人だっ
て大勢いますよね。だったら、そういう人たちが働きやすくなる手伝い
をしたい。「仕事か家庭か」と、どちらかを選ぶのではなく、やりがい
のある仕事と充実した私生活のどちらも持てるというのを実現したい。
宮 仕事に対して満足していれば、私生活も満足できると思います。仕事と
私生活がどういう割り振りであっても、満足度はイコールですよね。
どこかに不満があったら、どれも不満になると思うんです。
パ 互いに影響しあいますからね。アメリカでは、統計をとったら、「ワーク
/ライフ・バランス」を取り入れたら企業の業績が上がった、私生活を
助けた方がかえって企業にとって、いろいろと有益性が出てきたという
事例がいっぱいある。
実際に何をすれば企業も、社員も活性化できるのかといったようなこと
も、コンサルティングしたいと思います。
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■自己の責任でスキルアップしなければ、望む結果は得られない
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宮 『きゃりあ・ぷれす』には、いろんなフェイズの読者がいますから、決
めかねたり悩んでいる人も、たくさんいると思うんです。今までのご自
身の経緯からアドバイスするとしたらどんなことでしょう。
パ 私の記事をアエラに載せていただいたことがあるんですが、それは編集
者にあてたメールがきっかけでした。以前に、アエラが『子育ては損か
?』という本を出したんです。子育てが損だと考える人は企業に対して
の不満が多い。夫が過労死しそうなほど忙しいから家事が手伝えない、
それによって夫婦関係が悪くなるというようなことを読んで、“アメリ
カでは、社員が仕事と私生活の両方の時間を持てるようにした方が企業
にとって有益だという結果がでています。企業を変えたいと思っている
ので、一度お会いしたい”というメールをその編集者に送ったら、「ぜ
ひとも会いましょう」ということになりました。で、データも見せなが
らお話ししたら、記事にしてくれたんです。
私は編集者と知り合いだったわけでなく、ただ本を読んだというだけで
した。あの時“子育ては損だ”と思いながらも彼にメールを送っていな
かったら、あの最初の一歩というのはなかったし、私の人生は変わって
いなかったと思います。
宮 ちょっとやろうと思ったら、すぐにやることが大切ですね。
パ 実はほかにもいろんな人にメールを書いたんですが、いっぱいフラれた
んです。でも時々、そういういい人が返事をくれる。失敗して「ダメだ」
って落ち込んでも仕方がないですよね。アエラの記事のような仕事を1
つ受けようと思ったら、確率的には10回ぐらいメールや手紙を出して、
1つ2つ良い返事がくるくらいです。
宮 結構、フラれたような悪いことっていうのは忘れてしまいますよね。
パ もちろん、その時は胸が苦しいですよ。恥ずかしいなという気持ちがあ
ったりもしますが、そんなことを言っていたら前進できない。自分が今
できる範囲でベストを尽くす、というところで少しずつ努力する。
私のやっている「ワーク/ライフ・バランス」の場合、みんなにあまり
知られていないし先の展開がわからないので、期間を決めてやるのが難
しいんです。目標は石の上に書かないで、いつでもフレキシブルに変え
られると考えればいいのではないでしょうか。
もう1つ。あまり思いつきで会社を辞めちゃいけないな、というのはあ
ります。私の場合、心の中でやりたいものがあって、ずっと感じていた
会社への違和感が大きくなったから辞めたのであって、決して思いつき
ではありません。やりたいことが何もないのに辞めるのは、リスキーだ
と思います。
宮 感情的ではない自分のビジョンみたいなものがあり、それがだんだんと
大きくなり固まってきて、「この会社ではそれはできない」というので
あれば仕方がない。
パ 現実逃避で辞めるのもよくないですね。イヤだから辞めるのではなく、
何かしたいことがあるから辞めるというのならば、上手くいんじゃない
でしょうか。
宮 そのためには、何をしたいか考えるべきですよね。
パ ある程度、自分がやりたいことを具体化しなければいけないし、そのた
めにはスキルアップもして、“エキスパートになる”くらいに思いこま
ないと。“まあまあ”程度だったら他の人がいくらでもいますから。
資格をたくさん取るのではなくて、自分がやりたいことを見つけて専門
性を高めるということが大切です。
宮 一般的に多いのは、資格を取る場合に、これからニーズが多そうだから
といった発想が多いんですが、やはり自分が何をしたいかです。
パ そうですね。自分らしく生きるということが大切ですよね。人生にとっ
て仕事は時間をとりすぎるくらいに大きい部分だから、そこがエンジョ
イできていないと、人生楽しくないんじゃないかと思います。
宮 パクさんは、大学卒業後に何年かキャリアを積んでから行動なさったわ
けですが、やりたいことをやるにしても、やはりベースのキャリアがあ
る程度ないとダメですよね。次のステップが踏めないから。
パ まったくのキャリアチェンジもできるとは思うし、実際にそういう例が
あるのも聞きます。ただ私の場合、ずっと人事関係で、「ワーク/ライ
フ・バランス」も人事の分野なんです。自分のバックグラウンドと興味
がマッチして、その上にビルドアップしている。
私はずっとトレーニングの仕事をやっていたので、自分でプログラムも
立てられた。今までやってきた経験とスキルが生かせているんです。
宮 転職してもフリーランスになるにしても、以前の仕事がイヤで辞めたり
否定してしまうと、せっかく時間をかけても財産になりません。
パ 働いている間にステップアップしないとダメです。1年を振り返った時
に、去年より成長した何かがないと。何か秀でたもの、相手に「この人
がほしい」と思わせるなにかがないと。
宮 会社に勤めていたとしても、会社がステップアップのための材料を用意
してくれたり、目標を決めなさいと言わなくても、自分のなかで1年1
年を大切に課題を持ってやっていくこと。それが会社にも役立つし、自
分にも役立つのと思うのですけれど。
パ 自分のキャリアは自己責任です。働きながらスキルアップできるような
ポジションにいればいいのですが、そうでなければ自分でやっていくし
かない。もしやらなければ、それなりの結果を自分が引き受けることに
なります。キャリアを身につけるには、それだけの覚悟が必要だと思い
ます。
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●発行人:宮崎郁子
●編集:舩山弘子 高橋信夫 渡部麻美 大箭めぐみ 横井孝平
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