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投資に新風、ウィンドファンド 風力発電先進地の欧州で、一般市民が風力発電所に出資する「ウインドファンド」が新たな広がりを見せている。風力エネルギーを地域のエネルギー資源と見なす観点から、1990年代の投資主体は地元住民からなる共同組合が中心だったが、最近では遠隔地の市民も投資できるファンドが登場。欧州の風力発電拡大を根底から支えてきたウインドファンドに、社会的責任投資(SRI)の金融商品としての新たな意義も生まれつつある。 ◆地元にも投資家にもメリット 英国北ウェールズ州コンウェイバレーの風力発電所。地元2500世帯分の電力を供給する同発電所の建設資金は、オランダでウインドファンドを成功させたSRI専門のトリオドス銀行が英国で発売したウインドファンドからまかなわれている。 同ファンドの仕組みはこうだ。ファンドとして設立された会社の株式を「風力株」として一般市民に買ってもらい、それを元手に同社が英国内の小規模風力発電計画を中心に投資している。95年の第1回公募では57万ポンド(約1億円)余りを集め、将来的には約650万ポンド(約12億円)規模のファンドにすることを目指す。 同発電所では、地元農家が3基の風車のうち2基を所有して売電収入を得ることになっている。農業に希望を失いかけたこの地域の農家にとっては安定的な収入源の確保につながり、ファンドに投資する一般市民は配当収入を得られ、なおかつ地球上にクリーンなエネルギーが増える。ウインドファンドは、当事者だけが大儲けをするのではなく、誰もが少しずつ利益を得ることを目指した金融商品といえる。 世界トップの風力発電容量を誇るドイツでも、ニュルンベルクにあるウムヴェルト・バンク(環境銀行)など複数の金融機関が、ウインドファンドを含む再生可能エネルギーファンドを取り扱っている。 ◆プロジェクト大型化でニーズ増す 風力発電の老舗デンマークでも、一般市民が投資できるウインドファンドが増えつつある。 デンマークでは最近まで、個人が風力発電に投資できる範囲は投資家の居住する自治体か隣接の自治体に限定されていた。しかし、風車の大型化や海上風力発電所の設置などで発電所建設計画が大型化するのに伴い、より広く投資を募る必要性が増したため、2000年4月にこの規制が撤廃された。2001年に完成したコペンハーゲン沖合のミッデルグランデン風力発電所には、コペンハーゲン市民以外も投資している。ウインドファンドから得られる配当金は非課税。デンマークの環境政策や再生可能エネルギー技術を教える「風のがっこう京都」(京都府弥栄町)を主宰するケンジ・ステファン・スズキ氏は「今後は企業の年金基金でも海上風力発電で運用する流れが広がる」と予想する。 日本でもようやく、ウィンドファンドの手法に倣って地域内や全国から出資を募って稼働する市民風力発電所が軌道に乗ってきた。地球環境保護やSRIに関心を向ける人たちの間で、今後は資産形成の一環として自然エネルギーに”投資”する傾向が強まりそうだ。 (2006年1月掲載) |
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