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   仕事と社会のこれからを考えるリポート&アクションマガジン
         「きゃりあ・ぷれす」vol. 184
           2005・3・9(水)発行
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【特集企画】「MINOHODOism」レポート vol.2
      細分化・専門化から、統合化・全的医療へ。
      ようやく動き出した医療変革の流れ。(後編)

      ◆「統合医療展2005」レポート

      ◆模倣から独自の哲学、方向性の確立へ


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    西洋追随に邁進した結果が、また鎖国状態を生み出している
    という医療の状況からいかに脱却するか。
    「統合医療展2005」レポート         宮崎郁子
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「MINOHODOism」レポート第2弾として、ホリスティック医学、統合医療に
ついての特集を2回にわたりお送りしています。今号は、その後編です。

自分や家族が大病になって初めて関心をもつ医療。けれども病気というもの
は、私たちが生きていくうえで必ず出会う人生の節目であり、実はとても身
近なものです。私たちの死亡率は100%。少なくともその前には、ほとん
どの場合医療とかかわります。また、健康な状態と「病気」というものはグ
ラデーション的につながっていて、はっきりした区切りはないのではないか
と思います。

また一方「病気」というものは、私たちの生き方、日々の暮らしを映し出し、
目前に明らかにする「生き方の鏡」のようなものだとも思います。特に、成
人病、生活習慣病、心の病いなどは、そいう要素がとても大きいのではない
でしょうか。

これまでの西洋医学の考え方には、そのような視点が欠けていたように感じ
られます。身体の部分を別々の物体と考えて、病いを悪として叩きつぶす、
排除するという考え方が主流でした。ところが、それでは対応できない病気
が多くなっています。というより、西洋近代医学が得意とする伝染病や外傷
への対応、救急医療などが進歩し実績をあげているのに対し、西洋医学が不
得意な病気については、手を焼いているというのが実態なのだと思います。

また同時に、西洋医学の基盤である近代的人間中心主義が外の環境を壊し、
そのツケが結局私たち人間にも及んでいるという側面もあります。
近代的な西洋医学が、ある種の病気を抑え込み、人間の寿命を延ばしたこと
は間違いないでしょう。けれども、それだけでは決して十分とはいえないと
いう思いが、医療の当事者たちからも今わきあがりつつあります。

去る1月21日と22日の2日間、横浜において『日本初の代替医療、予防
医療の総合展示会』と銘打った「統合医療展2005」が開催されました。
今号では、仕事と社会を考える上で、大変重要な健康・医療という分野にま
で広がりつつあるMINOHODOism的価値観についてレポートします。

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●「統合医療展2005」レポート
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2005年1月21日と22日、パシフィコ横浜において「統合医療展20
05」が開催された。『日本初の代替医療、予防医療の総合展示会、ついに
始動!』とうたわれたこのイベントには、日本代替・相補・伝統医療連合会
議、日本補完代替医療学会、日本ホリスティック医学協会など、医師を中心
にさなざまな医療関係者を会員とする団体と、80を超える関連企業などが
参加した。

多くの講演、セミナーが開催されたが、どのプログラムも満席の盛況で、こ
の分野への関心の高さがうかがえた。
基調講演のひとつ「21世紀の統合医療の問題点と未来」では、東京大学名
誉教授、日本代替・相補・伝統医療連合会議理事長である渥美和彦氏が講演
を行なった。


<鎖国状態にある日本の医療界>

統合医療とは、近代西洋医学を軸としながらも、その周辺の代替・相補・伝
統医療を統合した、患者中心の全人医療である。アメリカでは既に国民の1
/3が代替医療を利用しており、2003年には、医療サービスを受けてい
る患者の50%以上が何らかの代替医療を利用しているという調査結果があ
る。
ここでいう代替医療とは、伝統医療、食事・栄養・ライフスタイルのケア、
薬理学的・生物学的ノウハウ、用手療法、生体磁気の応用、心身のコントロ
ールなどである。

これに比べ、日本では医療サービスを受けている患者は、ほとんど西洋医学
の治療しか受けておらず、病気でない人が代替療法的なものを利用している
というのが実態である。

その原因としては、アメリカではセルフケアが原則のため、患者の希望や医
師の提案で、その患者が最も納得できる医療内容が選択されるが、日本では
健康保険制度があり、ごく一部を除き近代西洋医学療法しか保険の対象にな
らないため、患者、医療機関双方の経済的理由から、なかなか他の療法が選
択しにくいということが考えられる。「日本では、残念ながら行政、学術と
も、目前の問題の対処に眼を奪われて、マクロな、歴史的流れを洞察するこ
とができず、鎖国状態にある」と渥美氏は語る。

ただ、昨年は1月に国際統合医療専門家会議が東京で行なわれたのを皮切り
に、9月には中韓日新文明会議が中国で開催され、そのひとつとして統合医
療の推進が決議された。また、11月には、超党派の議員により成る“統合
医療を推進する議員連盟”の準備会が行なわれ、具体的な組織化の目標とア
クションプランが今年策定されることになったなど、ようやく日本でも統合
医療に向けた動きが始まり、今年は日本における統合医療元年となりそうで
ある。


<宗教と医療>

渥美氏は、さらに宗教と医療との関係についてもふれ、宗教と医療が結びつ
いている例として、チベット医療が紹介された。チベットでは、密教の僧が
医者になることになっており、脈で心身の全体を観るなど、独自の医療体系
が確立されている。「医」とは、人への慈善であるというのが基本的前提と
されている。
またフランスのルルドの例にもふれ、年間30万人が病いを癒しに水浴し、
この30年間に16人が、ただちに全快したという数字が示された。


<今後の懸念>

最後に渥美氏は、次のように語って講演を終えた。
「ようやく日本でも広く注目を集め出した統合医療であるが、これを安易に
考え、統合医療を売物にする企業や医療関係者が続出することが予測される。
それらに対しては、厳しく警告を発する必要がある。」

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●模倣から独自の哲学、方向性の確立へ
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明治以降、私たちはそれ以前に永い時間をかけて培ってきたさまざまなもの
を捨て去ることに邁進してきたように思います。そして外、特に西洋からの
近代文明や科学を取り入れることにやっきになってきました。そして気がつ
くと、当の模倣の対象は、近代科学の追求のみでは手詰まりとなり、補完し
たり代替したりするようなもの、伝統的なものや東洋的なものなどをいち早
く取り入れようとしています。
それは、実は西洋近代文明を取り入れるために捨て去った、私たちが本来持
っていた考え方や技に近いものであったりします。
そうした動きに後れを取り、いまだに西洋近代科学一辺倒の日本は、またも
や鎖国状態だと自己否定することになってしまいます。そして、また西洋に
倣おうとする。そのような皮肉な状況が、医学界だけでなく、日本の学問や
行政の世界では蔓延しているような気がします。
このイタチゴッコを続ける限り、日本は永遠に後れた存在であり続けなけれ
ばなりません。

前回の「ホリスティック医学」の特集でも見たように、これからの医療に求
められているのは、むしろ東洋的なもの、日本人の心のベースにあるような
考え方です。それならばもう、西洋を模倣してそういうものを逆輸入しよう
とする考えから脱却し、まずは日本人にとって、どのような医学の考え方や
方向性がフィットするのか、自分たちの足元、自分たちの内面、そして永い
時間をかけて蓄積してきた智恵や技に眼を向けて再評価し、近代的科学や技
術のいいところは活かしながら、独自のスタンスや理想を見い出すことに、
叡智を結集すべき時なのではないでしょうか。

私たちの基本を考えた時、東洋というものの存在も大変大きいと思います。
近代科学の象徴ともいえる医学の世界で起こっていることを見てもわかるよ
うに、さまざまな領域で、西洋的近代主義一辺倒のやり方が限界に達してい
ます。私たちは、まず自分に立ち返り、そして歴史的にも地理的にも身近な
地域との連携を図り、そこから西洋に向けて有益な情報を発信していくべき
なのではないでしょうか。

まさにこれからが、本当の智恵が求められる時代です。模倣能力や技術力だ
けに頼っていた時代から、独自の哲学、方向性の確立をめざす時代へ。私た
ちは、まさにそういう大きな節目にいるのだと感じた「ホリスティック医学
シンポジウム」「統合医療展2005」でした。         (了)


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