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グリーンでサステイナブルなビジネス人を育てる ビジネス活動がもたらす環境破壊、そしてMBAホルダーたちが引き起こした数々の企業スキャンダルを教訓に、欧米のビジネススクールではここ数年、社会的責任を伴った持続可能なビジネスのあり方を講義や実践を通じて学ぶことができるMBA(経営学修士)課程が増えている。ビジネスは短期的な利益を追求するだけではなく、長期的視点に立って環境や社会問題に対する責任を果たすべきだとする考え方を持つ人たちが、キャリアアップの選択肢としてビジネススクールを選ぶようになり、彼らを受け入れるビジネススクールの環境に変化を促している。 ◆ 先生は現役ビジネスマン 米アイビーリーグの一角を占める名門私立大学の1つ、コロンビア大学ビジネススクールのソーシャルエンタープライズプログラム(社会事業専修)の授業には、「社会におけるビジネス」「社会起業家」「多国籍ビジネスと人権」「社会部門の戦略的経営」といった、これまでのビジネススクール教育では取り上げられなかったテーマが並ぶ。 このうちの1つ、今年から開講した「金融とサステナビリティ」では、地球温暖化の抑制を促す二酸化炭素(CO2)排出権取引や、企業の社会的責任(CSR)に積極的に取り組む企業に対象を絞った投資形態を総称する社会的責任投資(SRI)、途上国の持続可能な経済発展につながる案件に融資するプロジェクトファイナンス、途上国の経済的自立を促すマイクロファイナンスなど、持続可能な地球環境の実現に貢献する金融のあり方について一通り学ぶことができる。 担当のブルース・アシャー客員助教授(写真)は、普段はCO2排出権取引を利用して途上国での自然エネルギービジネスを支援するコンサルティング会社の社長として世界各地を飛び回るビジネスマン。経験豊富なプロから教えてもらえる授業とあってか、学生の評判も良い。アシャー氏は「授業で扱うテーマは様々な立場で応用可能です。何も全員が世界銀行やNGOやマイクロファイナンス機関で仕事をしなければならない訳ではなく、普通の民間企業や金融機関であっても授業で取り上げた金融ツールを使うことで世界に良いインパクトをもたらすことができるということをぜひ知ってもらいたい」と話す。 コロンビアを含むアイビーリーグ各校では、社会事業専修の学生にのみこうしたカリキュラムの履修を義務付けているケースが大半だ。しかし、最近は単科大学を中心にこうしたカリキュラムを全学生に対して必須化するMBA課程も開設されている。その一つ、03年に開設されたプレシディオ・ワールド・カレッジ(カリフォルニア州)のMBA課程の04年度の入学者数は、初年度の倍以上に膨らみ、学生の関心の高さを伺わせる。 ◆ 世界に広がる“社会的責任MBA” 米国のアスペン研究所と世界資源研究所(WRI)が世界18カ国のビジネススクール100校(米国68校、その他32校)から寄せられた回答を基に2003年にまとめた報告「Beyond Grey Pinstripes(グレーのピンストライプスーツを超えて)」によると、MBA課程に設けられた「企業の社会的責任(CSR)」「経営倫理」「社会事業」「環境と持続可能性」などに関する科目の数は、01年から03年にかけて70%も増加した。また、これらを必須科目としているMBA課程は全体の45%にのぼった。 同調査の対象は米国のビジネススクールが半分以上を占めているが、社会的責任を伴った持続可能なビジネスのあり方を学べるMBAが増えているのは、何も米国に限った現象ではない。 CSRへの取り組みを強化する企業と、CSRを研究する教育機関や政府機関との効果的な連携を目指して設立された欧州最大規模のCSR関連組織EABIS(The European Academy of Business in Society 本部ブリュッセル)。EABISが欧州にある約170の大学・大学院を対象にEABISが03年に実施した調査では、大学院の3分の1、および半数以上の学部で「CSR」や「社会におけるビジネス」といったテーマの授業を選択履修できることが分かった。 前述のビヨンド・グレー・ピンストライプに回答した日本のビジネススクールは1校もなかったが、MBA課程で社会的責任を伴った持続可能なビジネスのあり方を学ぶということは、今や世界では普通のことになりつつあるのだ。(2005年1月掲載) |
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