2015.12.17発行 vol.389
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発行人の気まぐれコラム 4

◇ next・近代。脱・明治

その16 マネをしない。海外のものは「いいとこどり」で。

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この「next・近代。脱・明治」コラムもそろそろ終盤です。
長文全部につきあってくださった方は、いらっしゃるでしょうか・・・?
ま、気を取り直して今号も書いていきますので、よろしくお願いいたします。

さて本題。

[何でも「欧米では〜」という「追いつけ追い越せ」呪縛からの脱皮]

「欧米では〜」というのは、よくコメンテーターや有識者の発言で聞かれるフレーズですよね。
もちろん江戸時代にはなかったことでしょう。そこには、明治以降の「日本はすべて遅れている。素晴らしく進んでいる欧米に早く追いつかなければ、そして追い越すくらいにガンバらなくちゃ」という思いが常識化していた状況が表れています。明治以降は、ずっとその常識に私たちは支配されてきました。
まあ、その方が楽ともいえます。自分で考えたり悩んだりする必要がないですからね。

でも実際は大いに違います。
たとえば! また30年以上前NYに行った時の話で申し訳ありません。さらにびっくりしたことがありました。当時日本はいわゆる高度成長期は過ぎていましたが、まだ成長期で、デザインやCMのレベルは大変高いものがありました。ところが当時すでにNYで放送されるTVCFは、ひどいレベルのものだったのです。成長が止まった現代の日本は、ほぼその状態なのですが、今私たちが目にするTVCFの通販広告みたいなレベルのものばかりだったのです。「なんじゃ こりゃ!」と本当に驚きました。
まあ、当時の日本ではデザインや広告が文化としてとらえられ、ブラッシュアップされていたのだと思います。そういう余裕があったし、日本人の美意識、職人気質によるところがあったのでしょう。
けれどもアメリカでは、どれだけ制作コストをおさえて、売上というリターンを得るかが広告に求めらることで、文化の「ぶ」の字も関係なかったのです。

今では、ほとんどのモノ・コトが欧米より日本の方が優れているといっても過言ではありません。政治や行政については、どうかわかりませんが。
TVCFのように日本のレベルが下がったことで、アメリカなどと同レベルに追いついたというものはあるでしょうが。

もちろん、その13に書いたオーストリアの「バイオマス発電」とCLT(クロス・ラミネーテッド・ティンバー)の生産のようなとても参考になる事例は日本以外の地域にも多くあるでしょう。 

http://www.pangea.jp/c-press/melmaga/data/151126.html

そしてそういうものは、欧米だろうがブータンだろうが、いいものは参考にして取り入れることは大切なことだと思います。でも、「欧米では〜」と言えばイコール先進的な優れものという洗脳の呪縛からは、解放されるべきです。
そしてコメンテーターや有識者も「欧米では〜」という便利で手軽な常套句には注意すべきでしょう。その発言そのものが安っぽくなってしまいますから。

近頃は、海外の多くの人々が日本の面白さ、不思議さに引かれて観光にくるようになりました。それでようやく自分たちの庶民文化の素晴らしさに気づいたような状況があります。
ですので、「欧米では〜」という軽々しい常套句は通用しなくなっているのですが、未だにそれに気づかない知識人といわれる人が多いのには驚きます。

 

[マネをしない。海外のいいものは「いいとこどり」で
「別品」をめざす]

とはいえ、私たちは2000年にわたって中国のマネをして、ここ140年位は欧米のマネをしてきました。けれども、決して人々は完全にそれらに染まることはなかったのですが。
さらに江戸時代の250年間は、外国からのモノ・コト・情報の流入はかなり限られていました。けれども皮肉なことにその江戸時代こそ、今海外の観光客が興味をもつ最も多様で面白い庶民文化や洗練された文人文化が花ひらいた時代でした。
もちろん江戸時代より前のマネから生まれ、独自に発達した素晴らしい文化と、入口は狭くても流入してくる他の国の文物あっての独自化なのですが、決して海外のものこそ素晴らしいという価値観はなかったと思います。医学や科学の分野では、確かに蘭学などが尊ばれましたが、文化の面では海外のものは素晴らしいという価値観は、非常に小さかったと思われます。明治以降とは大違いです。

欧米の近代的なものは、20世紀の間に十二分に取り入れたと思います。もちらんこれからも、どこでつくられたモノでもコトでも概念でも、いいもの、ビジョン実現に役立つのであれば「いいとこどり」は、どんどんすべきです。
けれども、欧米のものを無条件にいいとするあさはかな考えは、もう止めるべき時です。

これからは、20世紀の間にマネし、そして改善・改良したノウハウをさらにブラッシュアップして、江戸時代のようにこれまで導入してきたあらゆるものを、ビジョンに基づいてさらに工夫し改善し、問題点を解決しながら、「別品」へと昇華、発展させていく時間であるべきだと確信します。平和が続く限り。

 

[スポーツ以外では、世界で何位を争わない]

私はスポーツ観戦が大好きです。スポーツは一応共通のルールに基づいて順位が決まります。ドーピングや採点基準の意図的変更、ビジネス化など、問題をはらんでいる部分も多々ありますが、西欧近代がもたらしたものの中で、最も素晴らしい競い合い、切磋琢磨だと思っています。私は、時々ハイレベルな試合の究極な場面に神を感じることがあるのです。

けれども、それ以外は、私たちは世界の中で何位かを争う必要はないと思うのです。順位を争うのでなくその基準にはおさまらない「別品」を目指したいと思います。

みなさん、どう思われますか?

ようやく次号で、「next・近代。脱・明治。」のシリーズは一応ひと段落としたいと思います。

ご意見・ご感想をお待ちしております。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

2015年12月17日 『きゃりあ・ぷれす』発行人 宮崎郁子

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