2015.11.12発行 vol.384
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■INDEX■

発行人の気まぐれコラム 4

◇ next・近代。脱・明治

その11 外国とのつきあい方は「昼あんどん」。

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グロテスクな「ネクストワールド」への危惧からスタートして、「別品」の社会だった江戸時代の再評価、そしてそこから学ぶべきことも生かしながらの安心できる社会として、
まずは「食料の自給率を高めること」そして「原発から脱却し、自然エネルギーへの方向性の大シフト」「これからの科学」そして「マネーとビジネス」の話をしてきました。

もう少しイメージをはっきりさせるためのポイントが、まだ残っています。今号では、そのポイント(大きいこと、細かいこと様々です。)をラインナップし、それぞれについて何回かで説明していきたいと思います。

[私がイメージする「別品」で安心できる社会の方向性]

  1. 「めざせ大都市」から「自分が生まれた場所の再評価・活用」へ
  2. 各地域ごとの独自性、自立性を高める
  3. 大都市では、そこで生まれた者や変わり者が、少し風変わりで粋なモノ・コトをつくり出す
  4. GDP・経済成長神話からの脱却
  5. コンクリートの高層ビルの建設ストップ。新築からリフォームへ
  6. 何でも「欧米では〜」という「追いつけ追い越せ」呪縛からの脱皮
  7. スポーツ以外では、世界で何位を争わない
  8. マネをしない。海外のいいものは「いいとこどり」で「別品」をめざす
  9. 外国とのつきあい方は「昼あんどん」で
  10. 「自然豊かなちっぽけな島国」に住む自分たちの幸運に感謝し、誇りと気概をもつ

[外国とのつきあい方は「昼あんどん」で]

今号では、その中で9番目「外国とのつきあい方は『昼あんどん』で」について書いてみたいと思います。「積極的平和主義」なんかとは真逆ですね。

ここでご紹介したいのが、ある雑誌に掲載された原田武夫氏(原田武夫国際戦略情報研究所所長)の「時代を読む」と題された連載の中の「『昼行灯な倭国』というビジネスモデル」」というコラムです。
原田氏は元外交官で、任期中に培った人脈・情報源をさらに広げ、強化して、官僚の立場では到底不可能なおもしろい情報発信をしています。
その原田氏のコラムに、私の思いも加えながら書いてみようと思います。

■ 世界の2大勢力。

このコラムの大きなポイントのひとつは、4000年と2000年です。
4000年とは華僑・華人ネットワーク、2000年とはユダヤ勢(アシュケナージ)の歴史です。
「華僑・華人たちの歴史は王朝という意味でも実に4000年を超えている。(中略)一方米欧の文明は、根底にあるユダヤやキリストという流れであっても、たかだか2000年余りなのである。」
華僑といえば、商業に長けて世界中のあらゆる場で商売をしていることは、私たちの常識の中にもあります。そしてユダヤといえば、シェークスピアの「ベニスの商人」でも主要な役割として登場する、マネーの操り、管理には大変長けた人々というイメージがあります。
アメリカという国の隠された支配者は、マネーを牛耳るユダヤ勢だということも、何となく知っている人も少なくないと思います。イギリスでもユダヤ人は影の実力者です。
原田氏によれば、華僑・華人たちは4000年の時間の間に溜め込んだ膨大な富を、19世紀半ばごろから、その一部をマネー管理の得意なユダヤ勢(アシュケナージ)に預け始めたのだそうです。当初はその富をまじめに管理していたユダヤ勢は、ある段階から勝手に使ってもわかるまいと使い始めたということです。それが「アヘン戦争」やそれ以降のアジア史につながっているという見方をすると、実にわかりやすいのだそうです。
つまり、華僑・華人の4000年の商売による富の蓄積と、ユダヤ勢の2000年のマネー取引・管理(一部横領も含みそうですが)による富の蓄積が、現代でも世界の2大勢力と言えそうなのです。

今、中国が、後明あたり以降の停滞・衰退の歴史を経て、衰えを見せ始めているアメリカ(ユダヤ勢)との2大勢力としての実像を表し始めているという状況なのでしょう。
その2大勢力とどうつき合うかが、外交のキモという訳です。

■ 2大勢力とのつきあい方。

さて、そういう世界の大概観をふまえ、私たちはどう対応していけばいいのでしょう。

前にも書きましたが、大国中国にとって、長い歴史にわたって日本列島は、とるにたらない「ちっぽけな島」でした。
一方、日本はと言えば、文献に初めて登場する3世紀末、女王卑弥呼が時の中国王朝に対して臣としての服従の礼を示し、それ以来最も身近な文明大国の中国から多くのものを学んできました。また、中国国内の王朝交代などによって身の危険に瀕した貴人、知識人などが多数、貴重な文物、富をもって「安全な逃げ場所(セイフヘイブン)」としての日本に逃避してきたのです。そして、日本はその人々を厚く遇しました。そういう歴史は2000年近くということになります。
このつきあい方によって、私たちは中国から自分たちにとって役に立つことを取り入れ、独自化しながら文化や制度をつくり、富を得てきたのです。

一方、ユダヤ勢との本格的なつきあいは明治以降です。文明開化の時にはヨーロッパと、敗戦後はアメリカとのつきあいが継続しています。けれども、たかが165年です。それも、結果を見ても明らかなように、とても幼稚なつきあい方でしかありません。

さて、話を2000年近くのつきあいの方に戻します。
卑弥呼の時代から、日本列島の各支配者は隣りの大国中国に対して「気のいい臣下」「昼あんどん」を装い、「安全な逃げ場所(セイフヘイブン)」として、逃げてくる隣国からの貴人たちが大量に持ってくる文物、そして富を吸収し続けたのです。これを原田氏は「れっきとした我が国古来のビジネスモデルだった」と書きます。そして、今ではユダヤ勢もその方向で動いているらしいということです。
「昼あんどん」を装い、「セイフヘイブン」であれば何もしなくても、華僑・華人ネットワークとユダヤ勢双方から巨万の富が投げ込まれる。これこそ「昼あんどんビジネスモデル」だと言います。

巨万の富が投げ込まれるかどうかは別にして、華僑・華人ネットワーク(中国)にもユダヤ勢(米欧)にも、「昼あんどん」の外交をすることこそが、有効なビジネスモデルでもありうるという視点に、私は大いに心が軽くなる気がしました。
その時その時の情勢に小心に右往左往するのでなく、大きな枠組みを常に念頭に置きながら、問題を大きくしないようにじっくり対応する。「昼あんどん」を装う。子供じみた虚勢や見栄をはらない。
軍事力に頼るのでなく、巧みな外交によって生きていくべきです。そのスタンスで必要最小限の装備は必要かもしれませんが、日本現代史研究者で評論家・作家の保坂正康氏は、「武力の行使は政治の失敗」と言います。戦いや威嚇を前提にした外交は、自らの政治力への自信のなさを示すものでしかないと思います。もちろん威嚇を伴わない外交は、よりしたたかで緻密でなくてはならないので、政権や外交を担う者は、これまでのアメリカべったりよりずっとずっと困難で厳しい仕事をすることを求められる訳ですが。

ただ幸いなことに、江戸時代の「パックス・トクガワーナ」という基本を、もったいなくも捨ててしまった明治以降の政策によって手ひどい大敗戦をくらった際、戦勝国アメリカは「憲法9条」をプレゼントしてくれました。このことは実は日本の外交にとって最大の武器なのです。アメリカによって提供されたということが重要です。「憲法9条」があるので戦うことは難しいと言えば、アメリカは正面から否定することはさすがに難しいでしょう。(トランプが大統領にでもなったらそういう事実も無視されるかもしれないという危惧はありますが・・・)まあ、とにかく生活者の多大な犠牲によって得たその外交の切り札、ラッキーを私たちは有効に最大限活用したいものです。こんなラッキーをむざむざ自ら捨てようとしていることが、いかに痴呆的かがわかります。

私たちは、外の様々な争いに対し、どちらの側にも立たずに、それによって生じた人間や環境への打撃に対して、持っている能力を提供していくというスタンスで解決に寄与していく、国内においては、国民の安全や安心、そしてすばらしく多様で美しい自然環境を生かす農林漁業などを基本にすえ(実は最高のセイフヘイブンとしての戦略をもちながら)、変なシガラミやへ理屈で危険なものを置いたりしないというやり方が、この「ちっぽけな島国」には似合っているのだということに確信がもてました。
この日本列島は全体として、「最も安全な地上の楽園」となりうる条件を備えている希有な存在なのです。この恵まれた条件をわざわざ自ら壊しさえしなければ。

そうした歴史的な状況をふまえ、大きく概観を俯瞰して、私たちの長年の知恵を発揮する時だと思います。
原田氏は、こんな風にそのコラムを結んでいます。
「———こうした民族としての知恵を、『日本史への回帰』を語る時の宰相が最も無視し、徒手空拳で世界に出ようとしていることほど、滑稽なことはない。そう思うのは私だけだろうか。」

 

みなさんのご意見、ご感想などお待ちしております。



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2015年11月12日 『きゃりあ・ぷれす』発行人 宮崎郁子

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