2015.10.27発行 vol.382
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■INDEX■
発行人の気まぐれコラム 4
■ GDPや経済成長が私たちの幸せとリンクしていた時代。
敗戦後、日本列島は焦土と化し、ありとあらゆるものを失った私たちの祖父母や親の時代、それでも戦前の束縛から解き放されて自由になった彼らは、とにかく毎日生きるため、そして復興のために働きに働きました。そして戦乱のない世の中に安堵して、子供はどんどん生まれました。いわゆるベビーブームです。何もかも失った上、子供を養っていかなくてはならないのですから、あらゆるモノが必要でした。0からの出発ですからGDPはどんどん増大し、その頃、経済成長は敗戦国民にとってはまさに幸せに直結したものだったといえるでしょう。おそらくドイツも同様だったと思います。
そして同様に勤勉で知恵に富んだ人々は、それぞれ必死に頑張り、共に高度経済成長の道を突き進んでいきました。日本には、朝鮮戦争特需も有り難いものでした。(朝鮮半島の人々にとっては大変な苦しみだったのですが・・)
日本が、世界第2位だったドイツを抜いて、世界で2位の経済大国となったのは1968年です。
そして、かなり物質的なものが行き渡って、私たちは生活必需品から少し高価なものへ、嗜好性の高いものへ、そしてモノからコトへと欲求を広げていったと思います。
ニクソンショックやリーマンショックも経ながら、まあ安定成長といわれる時期が2007年くらいまで数字上は続きました。(2002年からこの年くらいまでを「戦後最長の好景気」というらしいです。)
おそらくそれ以降くらいから、経済のグローバル化がますます強烈に進行し、競争が激化し、格差が生まれました。それが街ゆく人々の姿にもはっきり表れたと感じられたのが、何度も登場させて恐縮ですが、「きゃりあ・ぷれす」300号のコラムだったと思います。
http://www.pangea.jp/c-press/special/Starting300.html
もうその辺りで、国内需要を伴わないGDPや経済成長と私たちの幸せはリンクしなくなっていたのではないでしょうか。
ちなみに、中国のGDPが日本を抜いて世界第2位になったのは、2011年です。3・11だけでなく、2011年はそんなこともあった訳ですね。ますます2011年という年はターニングポイントだったという気がしてなりません。
中国は、後明から清あたりの、ちょうど日本の江戸時代と重なる頃から、政治的にも経済的にも、そして文化面においても冴えない時代が続き、そして西欧に侵略され、日本にさえ土足で踏み込まれ、戦後も共産革命といった苦難に満ちた混沌とした時代が続いた訳です。
ようやくそれがある程度落ち着き、北京オリンピックを開催した頃からは、経済の上昇カーブが描けるようになったんですね。
ちっぽけな島国の日本が、大国中国に抜かれるのは、自然な成り行きです。
残念ながら、国内市場の縮小は、少なくとも日銀がさらにジャブジャブお札を刷ったり国債を乱発するような目先の対策では止められないし、逆効果でもありうるというのが実情です。
日本の劇的に進む就労人口の減少による国内市場の縮小は、これまで通りの成り行きまかせ、これまでの延長の対策ではそう簡単には止められないのです。そのあたりの詳しい分析は、ぜひ藻谷浩介氏(日本総合研究所主任研究員)によるベストセラー「デフレの正体」を読んでいただきたいと思います。
その分析については、伊東光晴氏(京都大学名誉教授)も近著その名もズバリ「アベノミクス批判~四本の矢を折る~」でも大いに評価しています。
藻谷氏による、内需の縮小に対する処方箋、「高齢富裕層から若者への所得移転」「女性の就労と経営参加を当たり前に」「労働者ではなく外国人観光客・短期定住客の受け入れ」は、確かにその通りだと思います。
その具体的方法についても言及されていますが、「女性の就労と経営参加」については、通常イメージされる雇用の促進や支援の強化だけでは、広がりを欠くと思います。都市での女性の長期間の雇用には、長い通勤時間の問題や勤務時間の制約、出産・子育て中の保障など、大きな企業や官庁でないとかなり難しいのが実情ですし、藻谷氏の本などで勉強していない男性社員の不満をおさえるのも、大変困難です。
それを実現するためには、職住近接や独立自営の拡大が必須です。東京などの大都市では難しく、地方の小都市や農漁村部では実現性の高いものです。すでに今でも行なわれていますが。さらにそうした地域の活性化が不可欠だと思います。
「デフレの正体」でも、様々な分析とそれにのっとった処方箋を書き終えた最後の章「おわりに」で、内需拡大の正しい処方箋を実行した場合の日本社会のイメージについてふれています。結果として表出する社会は「多様な個性のインパクトシティたちと美しい田園が織りなす日本」なのだそうです。
このコラムで書いてきたイメージと、ほぼ近いものです。
逆方向からのアプローチがほぼ一致したということは、大いに現実的で夢のもてる方向性だということを示していると思います。今の政策を真逆に転換さえすれば。
少なくとも政権には、それをジャマしないでほしいと思います。
そのためには、多くの市町村民が、固定概念や政権の洗脳や税金のバラマキ(買収)から解き放たれる必要があります。
藻谷氏の著書は、そのために大変役立ちますし、このコラムも微力ながらそのことに寄与できればと願っています。
次号以降も、変人以外の日本列島の普通の人々が安心して暮らせる社会について、もう少し書いていきたいと思います。
そうそう、外交とかやっかいなことについてもまだ書いていませんよね。それも次号以降で。
みなさんのご意見、ご感想などお待ちしております。
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2015年10月27日 『きゃりあ・ぷれす』発行人 宮崎郁子
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