2007.11.30発行 vol.262
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■特集企画■ヘロリ・ペロリ日記 その20
        〜 “ふたつの時間”のすごし方
               両方あって、どっちもいい 〜
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           ヘロリペロリ日記 その20
       〜 “ふたつの時間”のすごし方
               両方あって、どっちもいい 〜
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【ヘロリ山崎より】

こんにちは!お元気ですか? 今年も間もなく12月を迎えようとしていま
す。松田さんにとって、今年はどんな年だったでしょうか? 一年の過ぎる
のがどんどんと早く感じられるようになってきました。気を抜いていると、
それこそあっちゅう間のでき事のようで、まったく油断がなりませぬ。

僕にとってこの一年は、「過ぎ行くのが早い時期」と「じっくりと味わって
過ごす時期」というふたつの時間の流れが、交互に訪れていたような気がし
ます。大きな流れだと、春先までは「旧暦美人のすすめ」の出版に向けて忙
しく、充実した時間を過ごしました。出版後はしばらく静かな時間が続きま
した。そしてここの所また忙しくなりつつあります。

「過ぎ行くのが早い時期」とは、朝起きて何となくボーっとしていたら、日
が暮れてきちゃったりして、「ああ、今日ももう終わりか」なんて思っちゃ
う時期のことです。逆に、朝から気分はスッキリ、自分がやるべきことに集
中して取り組めて、ご飯を食べることも忘れて夢中になり、ひと区切りがつ
いて気がつくと日が暮れていたなんていう日は、「じっくり味わって過ごす
時期」だったなあと贅沢な気分に浸れます。

このようなふたつの時間を比べてみると、一方は無駄な時間に見えます。全
ての時間を気を抜かず、充実した時間にすべきだと反省しそうになります。
ですが、本当にそうなんでしょうか? というのも、実はふたつの時間はペ
アであって、どちらか片方だけを求めるのは無理なんじゃないかという気が
するのです。ふたつの時間は上向きの曲線と下向きの曲線で、お互いに手を
取り合いながらゆるやかなカーブを描き、上昇下降を繰り返すラインを描い
ているのではないでしょうか。それは好不調の波、バイオリズムなのではな
いかと、僕はにらんでいます。

身体感覚講座のときに、2人ずつのペアに分けるときに、松田さんは僕とS
さんをペアにすることが多いのですが、その理由は僕が「のろま」なので、
感覚の鋭いSさんと組ませるのだと言いました。「本当はのろまじゃないか
ら」だと松田さんは言います。僕は確かにのろまな人という印象を持たれる
ことが、ここのところ定番化してきました。それは何となく不本意なような、
それでいてまんざらでもないような、ビミョウな気分です。小学生の頃の僕
は、“僕の記憶によれば”落ち着きがなく、気の短い少年でした。間違った
ことが嫌いで、気に入らないことがあると誰であれ本人に直接文句を言うよ
うな、困ったガキでした(笑)。

あるとき、そのままでは本当にクラスで孤立してしまうというところまで追
い込まれて、そのころから僕はだんだんと、自分の意見を殺し、我慢をする
ようになりました。なるべくぼんやりと過ごすようにしました。そうしてい
るうちに、それが板について今の僕があるのです。なんて書くと、意識的に
やってきたことのようですが、実際は無意識です。子供なんて、動物的な感
覚で群れて、相手との距離を保っているようなある種、野生動物みたいなも
のです。僕がのろまになってしまったのは、「正義感が強く、ワガママ」で
いられるほどに強くなかっただけなんだろうなと、今では思うようになりま
した。

身体感覚講座に出て集中していると、そんな思い出したくもない記憶がふと
蘇ってくることがあります。昔の自分の記憶が、今の自分に大きく影響を与
えているのだと思い至る瞬間があります。僕は僕らしくあるために、今では
遠ざかってしまった「自分らしさ」を取り戻すことが、目下の課題であるの
だろうなあと思っています。ちなみに「のろま」であることは決して悪いこ
とだとは思いません。問題なのは「のろまであることに逃げ込んでいる」自
分自身のあり方なのですね。

で、「ふたつの時間」の話に戻りますが、僕の性格の部分にも同じようなこ
とが言えるのではないかと思うのです。「のろまな僕」と「のろまでない僕」
という存在も、実は両方とも必要で、いったんは「のろま」でいる必要があ
ったんじゃないかと思うのです。物事には全て過程があって、そのひとつひ
とつを味わうことで初めて得られるものもあるのです。

この堂々巡り、かつ自問自答のお手紙は、結論をだすことを重視するなら
「どっちやねん!?」と突っ込みたくなるような内容ですね。なんだかつら
つらと長文失礼しました。オチのないまま、無理やりにまとめてしまうと、
大事なことは「今、これからどうするか」です。恥ずかしい過去も、見通し
の立たない未来も、全ては一瞬一瞬の過程の積み重ねです。ならばその一瞬
一瞬を楽しまにゃソンソン! だと思います。

まったりと過ごしたり、充実して過ごしたりと、ふたつの時間を行ったり来
たりしながら進んでいくことは、「行きつ戻りつ」しながらだんだんと移り
変わる季節の流れと同じなのかもしれない、それはまた、月が新月から満月
へと、満ちたり欠けたりを繰り返す流れにもつながるのでしょう。そんなこ
とを思ったりしています。

さて、次回の講座は12月15日です。この頃では、22日に「冬至」があります。
一年で一番、夜の長い日です。いよいよ本格的な冬になってきましたね。そ
ういえばニュースによると、今年は急激な気温の低下で、毎年美しい紅葉で
評判の、東京国立市の銀杏並木が一晩で落葉し切ってしまったそうです。夜
の間に葉っぱが凍ってしまったのが原因のようです。
「冬至にはかぼちゃを食べて、柚子湯に入る」という風習がありますね。
慌しい毎日ですが、お風呂でゆっくりと湯船に浸かる時間を大切にしていま
す。松田さんは、寒さ対策にこの時期、何かしていることはありますか?

【ペロリ松田より】

えー、私、そんなこと言いましたか? エラソーに。そうだとしたらごめん
なさいね。私の方が、実は“ゆっくりちゃん”ですよ。中学の時にはすでに
あだ名の「えめ」転じて「カメ」だの、「ホルスタイン」だの言われていま
した。
でも年齢を重ねるにつれ、“やりたいこと”、“やらなきゃいけないこと”
の洪水に押し流されて、いまのスピードにギアチェンジで入るようになりま
した。

時間というのは不思議です。自分の関わり方次第で長く感じたり、短く感じ
たり……。総じて、真剣に全身で関わっている集中状態に入ると、時間の感
覚は変わります。
客観的な“Time”は、変わらないのに、感覚的には伸びたり縮んだりし
ます。

「きゃりあ・ぷれす」の講座では、午後いっぱい時間をもらっていますが、
いつもあっという間に4〜5時間経ってしまっています(…よね? )
面白おかしくやっているうちに「ナンダ、4〜5時間経っていたのか」と
来た人に思ってもらうのが、こちらの腕の見せ所なのですが。
実はそうやって集中力をつけているというのが、講座の隠れた“目的”の
ひとつでもあるのです。“集中力”すなわち、“体力”すなわち“生きる
力”なんていう見方もできるからです。

山崎クンのお手紙を読んで、フトそんなことを思いました。相変わらず、
時間の余裕がないので、このあと、うまくまとめてくれぇ〜! あと、質
問に答えてないね、ゴメン!

【ヘロリ山崎より】

お忙しいところ、いかにも慌しくお返事をいただき、ありがとうございま
す。なんともお忙しい様子が文面からも垣間見えるようで、松田さんが一
歩先に師走に突入したようで、頼もしく感じました。

旧暦においては、これからまだ11月を迎える辺りで、師走はまだまだと、
ゆったりと構えていようと僕は思っていたのですが、師走の慌しさは四季
の流れとは関係なく、仕事納めや新年を迎えるための行事のためなので、
僕一人がゆったり構えているわけにはいかないようです。「お正月」を旧
暦で祝うのは、日本では沖縄がそうなんですが、沖縄に行けば、この時期
をゆっくりと過ごせるのでしょうか。というか、沖縄は師走でものんびり
としてそうです。行きたいなあ、沖縄。沖縄の師走事情をご存知の方、い
ましたら編集部までお便りくださいませ。
本日、東京は気温が5度。エアコンを効かせた部屋で、ダウンジャケット
を着込んでいます。やはり僕は沖縄に行くべきだと思います。ああヤバイ。
僕のほうも案外忙しく、だ、だ、だ、っとここまで書き連ねましたが、ど
うにもこうにもうまくまとめることもままならぬまま、もう出かける時間
とあいなりました。う〜ん、これにてゴメン!

【ペロリ松田プロフィール】
■松田恵美子(まつだえみこ)
身体感覚育成講座講師。現代人における生命力の発露を探究。日々の動作や
日本文化における型などを感覚からひもとき、日常生活に活かせる知恵や技
として活用することで、自分のからだを自分で育む姿勢を伝えている。学校
教育における教材化の研究協力にも携わる。
Be-nature school講師。共著に『自分という自然に出会う)』(講談社/刊)
『おとなの自然塾)』(岩波アクティブ新書)。
監修『旧暦美人のすすめ)』(東洋経済新報社) 2007年3月発売

【ヘロリ山崎プロフィール】
■山崎義高(やまさきよしたか)
  「きゃりあ・ぷれす」編集部を経て、現在はフリーのライター。旧暦、身
  体感覚、ヨーガ、野菜、ビールなどをテーマに活動中。お仕事のご依頼は
  お気軽に〜♪<yoshitak@kingyobanchi.dialog.jp>
< http://www.sportsclick.jp/sportskids/ >、身体感覚講座から生まれた
本、『旧暦美人のすすめ(東洋経済新報社刊)』など。