2006.7.5発行 vol.224
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■特集企画■】「MINOHODOism」レポート vol.4-2

      ◆GNPからGNHへ。
GNH(国民総幸福)を国の指標とする
小国ブータンの壮大な試み

<「ブータン雑記」その2>
1.外国人旅行者から1人1日200ドルを政府観光局が
徴集する国
        宮崎郁子 
                   
       ◆ブータンの風に吹かれてみませんか。
       「トラベルサポート空」西木久恵さんからのコメント
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『きゃりあ・ぷれす』では、発行人宮崎郁子の旅行記「ブータン雑記」を
「MINOHODOism」レポート vol.4として読者の皆さまにお届けしています。
今号はその2回目。GNH(国民総幸福)を国の指標とするブータンとはどん
な国なのか。4月26日発行号<その1>にひきつづきお楽しみください。

<「ブータン雑記」その1> 掲載号
http://www.pangea.jp/c-press/melmaga/data/060426.html

〜前号<その1>の冒頭部分〜
 
昨年秋、ある雑誌で「ブータンの叡智」という特集が組まれた。私はその懐
かしくも美しく、かつダイナミックな数々の景観写真と共に、GNH(国民総
幸福)という文字に目をうばわれた。チベット(中国)とインドにはさまれ
たヒマラヤの小国が生き残るために選んだ道、それが「国民総幸福」を指標
とする国づくりなのだ。それが一体どんなものなのか、私は自分の肌で感じ
てみたいと思った。

単なる短い観光旅行であったが、私は3月末からバンコク経由で10日ほど
ブータンに出かけた。限られた時間で、さらりと3つの町を拠点として観光
ポイントを巡ったにすぎなかったが、バンコクという都市との強烈な対比も
あり、様々なことを感じ、ブータンという国や人々の一端に触れられたよう
な気がする。

それは「MINOHODOism」のひとつの具体的な姿であったように思う。

「MINOHODOism」とは
http://www.pangea.jp/minohodoism/toppage.html

とはいえ、わずかな旅行体験でひとつの国の有りようを正確に伝えることなど、
とてもできるものではない。このレポートでは、ブータンで手に入れた若干の
資料と出会った人から聞いた話を織りまぜながら、感じたことを書こうと思う。
あくまで私が感じたブータンである。

〜前号目次から〜

<始めに> 小国ブータンが世界に発信するGNHというコンセプト

「ブータン人にとってGNHは『進歩を目指すひとつの賢い指標』であり、それ
は過去半世紀の大いなる『進歩』の過程で世界が犯した、いくつもの過ちを省
みることで学び、たどりついたものだ。すなわち、多くの先進国が『発展』と
いうことはすなわち物質的な富の追求に他ならないという過った理解・解釈を
していた、ということに気づいたことからGNHという概念は生まれたのだ。」

<基本情報>今回の旅程概要

今回ブータンでは、涼しい高地にある首都ティンプーと亜熱帯気候のかつての
冬の首都プナカ、そして空港のあるパロに2泊ずつするという、ブータンを感
じるにはほぼ最短の期間のものであった。それでも他のアジアの国々、もちろ
んアジア以外の国々とのはっきりとした違いを感じることができるほど、ブー
タンは色々な意味でユニークだった。どんな風にユニークなのかについては、
<その2>以降、1〜8の項目に沿って私なりに感じたことを書いていきたい
と思う。

1.外国人旅行者から1人1日200ドルを政府観光局が徴集する国
2.マニ車(祈祷車)やダルシン(祈祷旗)によってお経が空中を満たす国
3.鎖国によって守られた自然や文化を資産として充分認識し、誇りとする国
4.支配されないための英語教育
5.土木工事をインドやネパールからの労働者に担わせる国
6.転生(REBORN)という常識
7.とても似ている、でも全然似ていない
8.これからのブータンに思うこと

〜転載ここまで〜

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1.外国人旅行者から1人1日200ドルを政府観光局が徴集する国

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ブータン旅行を計画し始めた時、まずびっくりしたのは、外国人旅行者は必
ず1人1日200ドルを支払う必要があると聞かされたことだ。その中には、
宿泊費、食費、ブータン内移動費用、ガイド費用が含まれていて、一部ホテ
ルを除きどのホテルに泊まろうが、民家にホームステイしようが、トレッキ
ングなどでテントに泊まろうが自由に設定でき、トレッキングなど車での移
動ができない場合は、馬での移動もできるという、楽しみ方自由自在といっ
た感のある何ともユニークなやり方だと、私としてはとても嬉しくなった。
(今回の旅での地元旅行社JOJOSの場合は、1人1日220ドルが規定料金
だった。旅行社によって多少の違いがあるようだ。)

1人1日200ドルというのは、アジア旅行のレートとしては決して安くは
ないが、たった1人で旅行したとしてもガイドとドライバーがついて、自由
で安全な旅ができることを考えると、団体旅行のあまり好きでない私として
は何とも嬉しかった。何でも1人でトレッキングツアーもできるということ
で、その場合にはガイドのほか、荷物運びの馬を引いてくれる人やテントで
料理をしてくれる人が同行してくれるとか・・・それって、ある意味とても
贅沢ではないか。

もちろんそれ以外に、日本からバンコクなどの中継地へ、そして中継地から
ブータンまでの往復航空料金がかかる。それ故、1週間ほどブータンに滞在
しようと思ったら(ブータン旅行ではそれが最短)結構な出費となる。

もうこの段階で、「どこかアジアの国に行きたい」レベルの気分の人はブー
タンに行くことを決して選ばないだろう。ブータンは、そういう旅行者をむ
しろ意図的に排除していると私には思える。

まずその段階で、ブータンのユニークさ、誇り高さ、熟慮によって自分たち
らしいやり方を決める意志の強さを私は感じ、GNHというコンセプトは決して
スローガンだけではないにちがいない、とますます期待が高まる思いがした
のだった。

資料によると、1人1日200ドルを政府観光局が徴集し、その上でないと
入国ビザを発行しない目的は、アジアの国々に多くいるバックパッカーなど
が麻薬を持ち込んだりするのを防止するためということだ。
あまりお金のない若い旅行者がこられないことについては、賛否両論あるだ
ろうが、ただ国内旅行より安いとか、人件費の安いアジアの国で自国では受
けられない色々な意味のサービス目当てといった不心得な旅行者を排除でき
るメリットは、やはり大きいだろう。

ブータンには本当にブータンに来たい人だけが来る。ブータン独自の自然や
文化に関心と尊敬の念を抱く人だけが来る。それでいいのではないかと思う。

もうひとつ観光政策として面白いと思うのは、外資ホテルの参入に対するス
タンスだ。ここにも、ブータンの意志がはっきり示されている。

アジアの都市にも必ずといっていいほど立地しているアメリカ資本のホテル
チェーンによる大型ホテルの姿は全く見られない。聞けば、外資ホテルで参
入できているのは、オランダ系インドネシア人、エイドリアン・ゼカ氏が展
開しているアマンとロンドンのコモ・ホテルズ・アンド・リゾーツによるウ
マだけのようだ。アマンといえば、アジアンリゾートの火付け役であり「世
界で最も優雅な隠れ家」と賞賛されている極上のヒーリング・リゾートホテ
ルとして知られている。またウマも、スタイリッシュな5つ星リゾートホテ
ルとしてヨーロッパ人にはつとに有名らしい。
そのどちらも、その土地独自の文化や自然を重要視し、景観と伝統を活かし
たあえて小さなホテルをつくることをコンセプトとして強くもっているとこ
ろである。もちろんこれらのホテルに泊まるには、規定の220ドルにさら
にプラス料金が発生するのだが。

アマン関連サイト
http://www.magellanresorts.co.jp/aman/amankora/index.html

ウマ関連サイト
http://www.como.bz/index_flash.asp

ブータンは、観光に対しても大きな関心を抱いているが、あくまでも人数=
量で勝負ではない。自国がもっている自然や文化を最大限に活かして、旅の
質でアピールしようとしている。また一方、来訪者の質も限定しているとい
えそうだ。残念ながら、地元ガイドやブータン資本の高級ホテルは洗練途上
というところで、プロフェッショナル度合いはまだまだという感じではある。
しかし、私としては「あらあら」と思うところはありながらも、スレたとこ
ろがない分悪い印象は残らなかった。

何ごともコンセプトをもつということは、対象を限定するものだ。地元体制
の洗練度は確かにまだまだではあるが、あまりスマートすぎるのも鼻につく。
ちょっと素人っぽさもまたいいという人は、いまの内かも知れない。

(次回につづく)

 

※今回の旅でお世話になった「トラベルサポート空」の西木久恵さんからも
  コメントをいただきましたので、掲載させていただきます。

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●ブータンの風に吹かれてみませんか。
  「トラベルサポート空」西久恵さんのコメント

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ブータンはヒマラヤの南に位置する九州ぐらいの大きさの小さな王国です。
「最後の秘境」、「シャングリラ」、「桃源郷」として紹介されていますが、
本当にピースフルで穏やかな国です。顔立ちは驚くほど日本人に似ています。
ブータンを訪れるとなぜかホッとします。時の流れがそして風景が訪れるも
のの心を安らかにしてくれるのです。この不思議不思議のブータン王国は私
たちに忘れていた大切なものを思い出させてくれます。物質的には決して豊
かではありません。だからこそ山深い国の人々は、昔ながら助け合って生き
ています。それは50年、100年前の日本を思い起こさせます。

そして、子どもたちの目が実にいいのです。物質的には恵まれていない子ど
もたちですが、決して物を欲しがりません。寄ってきて物をねだることも、
物欲しそうな顔をすることもありません。現状をそのまま受け入れていると
でも言うのでしょうか、誇り高さを感じます。あるものの中で工夫して、目
いっぱい生活を楽しんでいるように見られます。学校帰り、山道を走り回り
鬼ごっこに興じ、歓声を上げている姿を見ると、この国の未来が、進もうと
している方向性が間違っていないことを実感します。賃労働する子どもの姿
はありません。「教育と医療はタダ」、国民の自活、国民の幸
福を第一義とするブータンの中にあって、お互いの信頼関係が篤いのだと思
います。

車で走っていると、とんでもない山の中でぽつんと子どもや青年がたたずん
でいるのを眼にすることがあります。ジーっと膝を抱えて座っていたりする
のです。その光景が不思議でガイドに尋ねると「考えているんだ。若い時は
みんな考えるだろ」という答え。「この国の人はちゃんと物を考えているん
だ」と日本を省みながら痛く感じました。

この魅力あふれるヒマラヤの秘境、ブータンの風に吹かれてみませんか。
きっと「明日」が違って感じられると思います。

トラベルサポート空はブータンの旅行社JOJOSとの提携により、皆さんのご希
望に応じた旅のアレンジをいたします。どこよりもきめ細かい対応ができる
と自負しておりますので、どうぞお問い合わせください。

ブータン旅行に関しては、弊社HPに簡単に触れていますので参考にしてくだ
さい。宜しくお願いいたします。

トラベルサポート空 (東京都知事登録旅行業 第3-5240号)
(総合旅行業務取扱管理者  西木 久恵)
〒115-0055 東京都北区赤羽西4-20-2エイム赤羽ヒルズ101
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