2004.6.9発行 vol.166
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■特集企画■“LOHAS&オルタナティブな価値観と暮らし”について(後編)

      ◆メトロセクシャルというトレンドは、男性の意識変化の表れ?

      ◆企業や自治体の姿勢が問われ始めている

      ◆コミュニティービジネスの芽生え

      ◆小さな組織が未来を作る

      ◆引き続き読者からの感想が届きました!
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   “LOHAS&オルタナティブな価値観と暮らし”について
     大沢先生と発行人宮崎がいろいろと対談しました。
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今号では日本女子大学教授で労働経済学がご専門の本誌ブレーン、大沢先生
と発行人の宮崎による対談の内容をお送りします。

読者アンケートの結果からは、各カテゴリーで多少の差はあっても、共通し
て価値観の変化が見られるといった話で対談は始まりました。男性の価値観
の変化がニューヨークで“メトロセクシャル”という新しい言葉を生み出し
ているというお話が大沢先生からありました。メトロセクシャルと呼ばれる
男性はどういった価値観を持っているのでしょうか。

対談は地方自治や企業の仕組みなどにも飛び火し、どんどん展開していきま
す。旧来の価値観とこれから求められる価値観には大きな差異が立ちはだか
っています。今までの価値観ではどういった問題点があるのか、そのことを
まず認識することから新しい価値観を理解することができるのではないでし
ょうか。

2人の熱いトークから読者の皆さんの問題解決の糸口が見つかることを期待
しています。

大沢真知子(おおさわまちこ)さん
日本女子大学人間社会学部教授。産業構造審議会NPO部会委員。専門は労
働経済学。経済発展の中で女性の就業機会や結婚・家庭形成がどう変化して
いくのか、経済のグローバル化のなかで就業形態がどのように変化していく
のかを、国際比較の視点から研究している。内閣府男女共同参画会議の専門
調査会、厚生労働省のパートタイム労働研究会などの委員を務め、雇用をめ
ぐる制度や政策のあり方についても積極的な発言をしている。著書に『働き
方の未来−非典型労働の日米欧比較』(日本労働研究機構)『コミュニティ
ー・ビジネスの時代』(共著)(岩波書店)『働き方を変えて、暮らし方を
変えよう』(共著)(東京女性財団)『新しい家族のための経済学』(中公
新書)『経済変化と女子労働』(日本経済評論社)など多数。


・メトロセクシャル 【metrosexual】
若くて高収入で都市部に住み、女性的ファッション-センスや文化的趣味を
もつ(異性愛者の)男性。エステに通う男性など。近年アメリカで、新しい
市場層として注目されている。メトロセクシュアル。
〔作家のマーク=シンプソン(Mark Simpson)による造語。都市住民(メト
ロポリタン)と異性愛者(ヘテロセクシュアル)の合成語。同性愛者(ホモ
セクシュアル)に加えて異性愛者も女性的な文化嗜好(しこう)を持ち始めた
ことから〕三省堂提供「デイリー 新語辞典」より

※ただし、対談で使っているメトロセクシャルは、他人や配偶者などに対し
て優しく配慮するセンシティブで女性的な感性を兼ね備えた男性のこと。
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●男性の意識の変化とメトロセクシャル
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宮崎 読者アンケートの結果を見てまずどう感じられたでしょうか。

大沢 LOHAS&オルタナティブ的な価値観に共鳴する方が「きゃりあ・
   ぷれす」の読者にとても多く見られたように感じました。あるいは、
   そういう価値観を持った方がアンケートに答えて下さったのかもしれ
   ません。学生や読者以外の社会人の人たちの回答と比べると、環境問
   題や代替医療について関心を持つ割合が読者の方に多いようです。
   また、特に男性にそういったLOHAS的な傾向が強かったのが、印
   象的でしたが、回答数自体がとても少ないのが寂しいですね。もっと
   男性の方に参加していただきたいと思います。
   「男性的な意識」「女性的な意識」という区別は誤解を呼ぶかもしれ
   ませんが、ビジネスと割り切って利益を追求する価値観に重きを置く
   のを男性的、生活を重視し、環境問題や代替医療などに関心をもつ傾
   向を女性的とするならば、EUやアメリカでは社会全体が女性的な感
   覚をずいぶんと持ち始めているというのを今回アメリカに行って感じ
   ました。新しい言葉で“メトロセクシャル”という言葉をご存知でし
   ょうか。

宮崎 いえ。それはどういった意味なのでしょうか。

大沢 語源は知らないのですが、他人や配偶者などに対して優しく配慮する 
   センシティブで女性的な感性を兼ね備えた男性のことを指す言葉のよ
   うでした。例えば、これはいい例えとは言えないかも知れませんが、
   アメリカのブッシュ政権で閣僚に選出された女性がいたのですが、
   「私には家族の方が大切」と言って、ホワイトハウスを辞めたんです。
   その方の手記が出版され、空港で積み上げられているのを見ました。
   20年前のアメリカだったら考えられないことだと思いました。
   かつては「私は家族も大切だけど、まずは自分のキャリアを優先する。
   自立した女性として男性社会で勝ち抜いた」女性の本が売れていたん
   です。家族を優先してキャリアを犠牲にする女性の本が書店に並ぶこ
   とは考えられませんでした。
   20年経ってみると男性も女性も家族生活を最優先にしている。キャ
   リアだけではなく家庭生活とのあいだでバランスのある生活をする方
   がいいと考える人がとても多くなっていました。そういった価値観を
   持つ男性の増加とアメリカ人の若い女性たちが、メトロセクシャルな
   男性を理想と考えていることとのあいだには大きな関係があると思い
   ます。
   また、友人の奥さんの話なんですが、彼女は苦労して医師の資格を取
   ったんですが、今回あったら、NPO法人の医療機関で恵まれない子
   供たちの診療所に勤めていた。その理由を聞いたら、民間の病院で働
   いていたが労働時間が長過ぎて、夫とすごす時間がほとんどなかった
   ので、NPOが組織する病院に移ったというんです。収入はすごく下
   がったけど、生活にはとても満足していると言っていました。そうい
   った声を聞くとアメリカの社会の変化を感じます。
   それから、友人の50歳のアーチストが40歳の管理職の女性と結婚
   したんですが、両方とも子供が欲しくて今年の2月に男の子が誕生し
   ました。昔からの彼を知っているわたしたちには、父親としての彼の
   姿が想像できなかったのですが、はじめて父親になってすごく嬉しい
   と言っていましたし、彼が子供をあやしている姿を見たりしながら、
   とてもメトロセクシャルな感じだと思いました。

   世界的に見ると、バランスの取れたライフスタイルに人々の意識が向
   いているのではないでしょうか。過度に仕事を優先したり、逆に家族
   との生活だけを求めたりするライフスタイルは選択されてない時代に
   なってきているようです。ですので「きゃりあ・ぷれす」の読者の男
   女比を比べると、まだまだ男性の数が少ないなと思いました。

宮崎 これでも年々男性の数は増えていて、増加率はなかなかのものですよ。
   ただ、絶対数が少なすぎるというのはご指摘の通りです(笑)。

大沢 それはちょうど、男性の育児休暇の取得率に近いものがあるかも知れ
   ませんね(笑)。

宮崎 先ほどの「メトロセクシャル」というのは、男性と女性の区別はある
   んですか。

(編)男性のことを言うようです。ネイルアートに凝ってみたり、エステに
   通ったりといったことに関心のある男性のことのようです。そういっ
   たファッション的なスタイルから言われることもあれば、自分の価値
   観に正直になって既成の価値観から解放されている男性のことでもあ
   るようです。

大沢 それは面白いですね。あり方が多様であるのが本当だと思います。こ
   とばが流行する背景には、カップルが一緒にビューティーパーラーに
   出かけたりすることが商業的に宣伝される一方で、もっと根源的なメ
   ッセージも同時に発信されているのだと思います。メトロセクシャル
   の見え方は外面的なことも言われる一方で、より重要なのは内面的な
   変化の方なのだと思います。家事や育児を夫婦のどちらがやっても構
   わないといった柔軟な考え方をもった世代が、ある年代より若い人た
   ちに多く見られるようになってきています。
   今回いろんな世代の人たちと会ってきたのですが、40歳台半ばより
   若い世代の人たちは柔軟にいろんなことを考えていて、メトロセクシ
   ャルなライフスタイルがこれからのトレンドになっていく予感がしま
   した。

宮崎 メトロセクシャルというのはおそらく、コマーシャルな消費のトレン
   ドとして出てきたのだと思います。しかし、その根底には男性の価値
   観の変化があるのかも知れません。

大沢 そうですね。そういった傾向がこれからは更に生活全般に見られるよ
   うになってくるのでしょうね。眉剃りをする男性とか多いみたいです
   し。あと、私は韓国の俳優のペ・ヨンジュンを見ていると、彼のイメ
   ージはとってもメトロセクシャルだと感じますが(笑)。韓国や日本
   で彼が熱狂的に支持されるのを見ると、メトロセクシャルは世界的に
   広がる可能性の高い価値観と言えるかも知れません。

宮崎 アンケート結果から見ても男女の参加数の差はあっても、男性の価値
   観の変化はある程度明らかになってきたということが言えますね。今
   後はもっと調査対象を広げて、男女の比率を同じくらいにして年代別
   にも分けて調査すれば、目に見えた形で結果も出てくると思います。

大沢 そうですね。日本でもそういうトレンドは出てくると予想できますね。
   男性の意識の変化をうまく捉えることができれば、企業にとってはビ
   ジネスチャンスが見えてくるかもしれません。
   アンケート結果を拝見して、女性の回答結果はある程度予想ができま
   したが、男性の回答者は人数自体は少ないのですが、回答の内容は平
   均的な女性よりもLOHAS的な回答だったことからも、ニューヨー
   クで最近私が会った人たちと話したときにも感じた価値観の変化と共
   通したものがあるように思います。

宮崎 商業の世界では、女性の市場はかなり開発され尽くした感があります。
   そこで浮上してきたのが男性や子供の市場です。子供をビジネス対象
   にすることには大きな問題を感じますが、男性に関しては、男性が自
   分の欲しいものを作るというビジネスなら、大いにやってもらいたい
   と思います。それによって、従来は女性的といわれた価値観や意識が
   広がっていくかも知れません。

大沢 そうですね。数字が出ることで分かってくることがある一方で、全体
   的な流れの中で、例えば「イケメン」ということばが流行することと
   併せて考えると、見えてくることもあるのではないかと思います。


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●企業や自治体の姿勢が問われ始めている
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大沢 学生のアンケート結果と、あと卒業論文を読んだりして思ったのは、
   若い世代の人たちの中にはLOHAS的な価値観を持ち得る予備軍的
   な人が多いように感じました。
   こういった価値観のアンケートは他にやるところもなく、貴重なもの
   だと思います。ただ、こういったデータをビジネスに直接活かすとい
   うよりは「社会的責任投資」という考え方とセットで活かして欲しい
   と思います。
   社会的責任投資はこれまで日本の企業にそれほど関心を持たれてなか
   ったんですが、最近ではそういったことに企業として取り組んでいな
   いと投資ファンドに組み入れてもらえなかったり、株価も下がったり
   してしまうので企業もずいぶんと取り組むようになってきました。
   企業だけで取り組むのではなく、NPOと組むのもひとつの方法では
   ないかと思います。アメリカではGAPがそういう方法で成果を挙げ
   ています。労働環境をNPOがチェックして、いい環境で生産が行な
   われていることを公表することで企業イメージのアップに成功しまし
   た。
   またその一方で、社会的責任投資に懐疑的な見方も聞きました。企業
   はイメージアップのための単なるカモフラージュとして取り組むだけ
   で、社会や環境のことに関心があるわけではない、といった意見です。
   それはある意味、現実を表していると思います。

宮崎 企業の基本的な姿勢についてですが、ひとつには利益の追求というこ
   とをビジネスの「目的」に定める場合です。そこでは株価を上げるた
   めにみんなが求めていることをする。例えば環境に取り組めば株価が
   上がるだろうと思って取り組む場合、その取り組み自体は「手段」で
   す。企業の目的はあくまで利益の追求なんです。
   もうひとつの姿勢は「目的」としてより気持ちの良い社会を作ってい
   くことを目指します。その場合は目的のためにビジネスやお金を「手
   段」として使用するという姿勢です。
   その二つの姿勢は根本的には全く違った考えに基づきながらも並列的
   に進んでいくんだと思います。外から見ると一見同じように見えても、
   一方は株価を上げるため、利益を上げるためにやっているだけなので
   どんどん経済発展をしていかないと成り立たない仕組みになっている
   んです。環境負荷がかかったときに、保全のためにコストがかかる場
   合でも利益の範囲内でないと決して取り組もうとしないわけです。実
   はその仕組みが一番問題なんです。

大沢 そうですね。そういった仕組みを変えていくためには私たちの側から
   の働きかけが必要なんだと思います。そうすると、今の日本の社会の
   中でどんな方法がありえるのでしょうか。

宮崎 例えば経済成長を量る指針の中に、まだ足りない要素があるのかも知
   れません。経済発展の要素として環境や気持ちの良い社会といったこ
   とがもっと取り入れられる必要があると思うんです。その必要性をど
   う伝えれば企業に理解してもらえるのか、その方法を見つけたいです
   ね。

大沢 企業への働きかけではありませんが、地方において住民投票が行われ
   る数が増えているということを聞きました。住民投票の結果そのもの
   が直接議会の決定を覆すほどの力はないのですが、選挙などで住民の
   力が強くなると進歩的な市長を選ぶことで、市や県が原子力発電所の
   建設を断念するという例も出てきました。
   住民投票もひとつのキーワードになるのかも知れません。

宮崎 そこでは投票率の問題がありますよね。地方の問題について住民投票
   するとかなりの投票率になりますが、同じ投票でも選挙になると30
   %そこそこだったりします。そのギャップはどこからくるのでしょう
   ね。

大沢 例えば自分の家の裏がゴミの集積場になるとすると、それは困るから
   それを阻止しようと住民が団結するけれど、国の政策については、見
   えにくく、自分が投じた一票によって何かが変わるということが実感
   されにくいからでしょうか。ただ、地方では住民の力が強くなってい
   るように思います。

宮崎 それは行政の仕組みが地方へしわ寄せする発想になっていたからでし
   ょうね。

大沢 財政赤字が累積してきた状況の中で地方分権が言われ始め、中央から
   の助成金も削減されて、地方が独自にやらなきゃならないというとき
   にそれぞれが小さな動きではあるけど、住民が行動を起こし始めてい
   ることは大きな救いだと思います。

宮崎 それぞれの市町村で情報公開が行なわれるようになったのも大きな変
   化ですね。市民が自発的に変わってきたのかは分かりませんが、知ら
   ないことはコストが高いんだということがだんだん分かり始めたのか
   なと思います。官官接待とかも、それによって町が潤うと思われてい
   た頃は問題にされなかったのが、中央政府からの補助金が減らされて
   いる中で、接待に使われているお金は税金が無駄遣いされていると住
   民が認識し始めました。


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●コミュニティービジネスの芽生え
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大沢 生活に根ざした発想をする人が増えてくると、大きなビジネスではな
   くてコミュニティービジネスやスモールビジネスのような、地域のた
   めになるようなビジネスが少しずつ増えてきています。では、スモー
   ルビジネスに参加することがどうして魅力的なのかというと、LOH
   ASの価値観の「人間関係を広げることが重要」といったことや「他
   人を助けることが重要」といったことに繋がってくるんだと思います。
   特に女性にとって、自分の能力を活かす場は限られているので、報酬
   があまり望めなくてもそれまでの経験を活かせる場、それでいて地域
   のために働ける場を提供するコミュニティービジネスに人が集まって
   くるのは自然なことのように思います。そしてコミュニティービジネ
   スの組織形態はすごくフラットなものなんですね。これが広がってい
   くとひとびとのコミュニケーションのあり方や関係性が大きく変化し
   ていく可能性があります。
   読者アンケートの結果と、今の日本の経済変化をあわせて考えると、
   こういった価値観の変化とビジネスチャンスの繋がりによって日本の
   社会が良くなっていく可能性を感じました。

宮崎 いろいろなお話を伺いましたが、これからはエネルギーにしろ廃棄物
   にしろ、地域の中でいかにして処置していくのかが重要なことなのだ
   と思いました。そういう方向性だとみんなが住民投票の感覚を持てる
   んです。今の選挙だと、自分にとってどこか遠い世界のできごとみた
   いな感覚だから、参加もしないし結果も知らないということになるん
   です。参加しないことに危機感を持つこともありません。だからもう
   少し狭い範囲内で自分達のことは自分達でやるという方法をとれば、
   必然的に全てを自分の問題として考えることができるし、小さなビジ
   ネスもたくさん生まれてくると思います。
   日本の経済の基本は輸出に頼っているんですが、経済成長が国の発展
   だとする考え方はもう通用しなくなっていると思うんです。
   確かに、あまり輸出しない輸入しないということにすると、必ず経済
   規模は小さくなります。でもそこに実は気持ちの良い社会ができてい
   るはずなんです。経済成長を続けることが気持ちの良い社会の実現を
   遠ざけているのが現状です。

大沢 そうですね。中国経済やアジアの経済の回復に支えられて、輸出主導
   の日本経済も回復しているという事実はあります。ただ、結果として
   日本の製造業は生産の部分を海外で行なうなどして空洞化が起きてい
   ます。あと建設業は狭い国土を開発し切っているので今更開発する余
   地はもうありません。今後考えられるとすれば、壊してしまった自然
   環境を元に戻すという作業でしょう。途中まで作ってしまった不要な
   橋を壊して、ちゃんと住みやすい場所にするということは雇用機会を
   作ることにもなるし、住みやすい社会を作るという意味で重要なこと
   です。
   製造業では単純作業は海外の労働力に頼ることになると思うので、何
   が成長するかというとサービスなんです。日本の将来的なことを考え
   れば、コミュニティービジネスみたいなものが増えていくことで雇用
   を産み出して、それが日本の福祉の質の向上にもプラスに作用して政
   府の福祉関連の予算を削減できると思うんです。

宮崎 やり甲斐をもって取り組んでいる人で構成された民間のサービスがあ
   れば、安価で良質なサービスを提供するということはできそうですよ
   ね。

大沢 確かに経済の大きな成長は望めないだろうけど、それは世界中どこの
   国だってそうなんです。成長期のあとは成熟した社会になって、成長
   率も緩やかにならざるを得ない。そういった状況の中で何に価値を置
   く社会をこれから作っていくのかがが問われているわけで、「きゃり
   あ・ぷれす」のLOHAS&オルタナティブ的価値観というのは、単
   にアンケート結果を見るに留まらず、その変化の方向を考えていく上
   でのさまざまな示唆を与えてくれるように思います。わたしが注目し
   たのは、「内面的な成長を重視している」という質問にそれぞれ96
   %の方が「はい」と答えたことです。そういった人間関係のネットワ
   ークを広げることにすごく関心が高まっていることが今後、コミュニ
   ティービジネスの広がりに繋がっていくのかどうかを見ていきたいと
   思っています。


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●小さな組織が未来を作る
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大沢 正社員の働き方で、やりがいが持てないという方が多いなというのを
   感じました。私はどちらかというと「働き方」を変えないといけない
   と今まで言ってきたんですが、それだけではだめなのかもしれないと
   思いはじめました。上から押し付けられた仕事をやるだけだと、自分
   が何のために働いているか分からなくなってきて、辞めてしまったと
   いう人の話を聞いて、もしかしたら日本の正社員の働き方の問題点は
   「自発的」「自律的」に働ける環境が整っていないことにあるのでは
   ないかと思いました。
   例えば自分のやりたい仕事の部署で実績を積んでも、次に全く関係の
   ない部署に配置転換させられることが当然のように行なわれている職
   場環境では、働きがいを段々と失っていってしまうのではないでしょ
   うか。

宮崎 配置転換の問題もあるでしょうし、あとは仕事が非常に分業化されて
   しまっていることもあるかも知れませんね。組織が大きくなればなる
   ほど分業化が進み、自分が担っている工程しか分からないことになっ
   てしまいます。自分のやっている仕事がどんな結果になっているのか
   分からないという仕組みになっているんです。
   今までの考え方では分業化した方が効率がいいので、利益を最大限に
   産み出すと考えられていましたが、それだと全体に対する責任感が持
   ちにくい。自動車の欠陥問題がありましたが、ああいったことも全体
   が見えにくいことに原因があるのかも知れません。効率を上げて利益
   を出しているはずが、後で大きな問題に発展してしまうということが
   起きると、やりがいも感じにくいという結論になって当然という気が
   しますね。
   仕事をトータルに取り組めることがやりがいに繋がるのなら、私のと
   ころなどもそうなんですが、小さな組織だとトータルにならざるを得
   ないんですね(笑)。

大沢 自分が何をやっているかが分かってやっているのと、そうでないのと
   ではやりがいも違って当然だと思います。

宮崎 小さな組織だと全体が見えるので、働いている人の価値観と外れてい
   るものは生まれにくいですよね。作業に携わっている人の価値観と、
   生み出されたもののあらわす価値観が近いということです。
   そういうことが当たり前になることがこれからの社会を変えるのでは
   ないでしょうか。大切なことは今の世の中に大量生産、大量消費がも
   はや必要ではないということを認識することではないでしょうか。
                               (了)


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●引き続き読者からの感想が届きました!
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前編で読者の方からの感想をお送りしましたが、そのあとも引き続き2人の
方からお便りが届きましたのでご紹介します。
今後もご意見ご感想などありましたら、編集部までお送りください。皆様か
らのお便りを楽しみにお待ちしております。


何気なくメルマガを読んでいましたが、仕事と生活、社会という関わり方で
は女性の考えかたの方がはるかに進んでいますね。
(男性は儲かれば良い、とか仕事のON、OFFをはっきりと区別しているよう
な気がします。・・・でも、最近はそうでもないかな?)
世の中の傾向ですが、だんだんと”自分スタイル”を確立しているみたいで
すね。(会社が”軸”ではなくて、自分の生活が”軸”)

・会社都合で知らない土地に転勤をさせられる
・一生同じ会社だが、どんな仕事が与えられるか分からない
・会社利益優先(社会や世の中がどうなろうと関係ない?)

ということについて、ちょっと前まで何の疑問も持たなかったことが(かえ
って幸せ?)大きく見直されているような気がします。
やっぱり人間どんどん賢くなっているのよ!       (--Mさん--)


送って頂く度に考えるところがありましたが、今回は特に真剣に読みました。
先月派遣社員として2年以上働いた会社を辞めました。仕事を任せられやり
がいもあり、社員の方々ともとても上手くいっていました。
ただ社員削減で仕事量が増え、かなり忙しくなり残業も相当増えてしまいま
した。精神的にも余裕が無くなり、家族への気配りが足りなくなったと感じ
てきたのです。
今月から働いている会社は仕事量が極端に少なく、残業も有りません。当然
時給も下がりましたが、自分に余裕が出来とても満足しています。
自分にとって何が一番大切なのか,数ヶ月悩んで得た結果です。
                          (--メグさん--)