2004.3.3発行 vol.158
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■特集企画■第6回読者アンケート結果発表(後編)雑誌ソトコトプレゼン
トも
◆「ライフスタイル・価値観」調査で見えてきた、私たちが求める本当の
働き方、暮らし方 (木村麻紀)
・持続可能な地球環境や経済のあり方を望む
・人間関係を広げながら、自己実現をしたい
・好奇心を持って理想実現のために行動したい
・なるべく薬に頼らない病気予防を心がけている
・身近に自然を感じていたい、血縁を超えた仲間意識
・やりがいを持って社会貢献できる仕事を
◆「ライフスタイル・価値観」アンケート結果について (宮崎郁子)
・全体として「あてはまる」の度合いが高いので、あえて度合いが低い
ものに注目してみました。
・男女別の結果から見えること
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第6回読者アンケート結果発表! 後編
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今号は、昨年実施した第6回読者アンケートの「価値観・ライフスタイル」
に関する調査結果の特集です。
「きゃりあ・ぷれす」では最近、バブル崩壊などをきっかけに増えつつある
地球環境と人間生活の持続可能性を大切にする価値観に沿って行動する人々
がどんな仕事や活動をしているかにスポットを当て、「天職を探せ!」など
のコーナーを通じて皆さんにご紹介してきました。2002年11月20日
配信号の「きゃりあ・ぷれす」で、このような価値観を持った人々が米国で
増えていることを、LOHAS(ローハス、Lifestyles Of Health And
Sustainability)という言葉とともにリポートしたことをご記憶いただい
ているかもしれません。
<
http://www.pangea.jp/c-press/backnumber/cp-0122.html
>
「きゃりあ・ぷれす」では、色々な分野で今同時に生まれているLOHAS
的な価値観を反映したビジネスや活動こそが、不安感や閉塞感が漂う私たち
の暮らしや働き方を変えるカギになると考えています。でも、LOHAS的
な価値観って一体日本ではどの程度受け入れられているのでしょうか。なら
ば調べてみようということで、今回読者アンケートの中に新たに「価値観・
ライフスタイル」の項目を入れさせていただきました。そして、より多くの
方々から回答を得るため、この項目では読者以外の方々にもご協力いただき
ました。
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●「ライフスタイル・価値観」調査で見えてきた、私たちが求める本当の働
き方、暮らし方
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回答者総数:287人(女性262人、男性25人)
平均年齢:32.5歳
まずは、4−1−1「自然を愛している」から4−1−18「見知らぬ地域
やそこに住む人々が好き」までの質問に関する調査結果をご紹介しましょう。
これらの質問は、LOHASを提唱したポール・レイ氏らの著書
“The Cultural Creatives”の冒頭にある質問とほぼ同じ内容です。
これら18の質問のうち、10個以上に「あてはまる」と答えた方はLOH
AS的価値観を持っている可能性大だそうです。そして驚くべきことに、ご
回答いただいた286人中265人、何と92.7%もの方々が10個以上
当てはまりました!!もちろん、「きゃりあ・ぷれす」編集部メンバーは全
員10個以上「あてはまる」でした。
1.自然を愛し、自然破壊を非常に懸念している … 83.9%
2.地球規模の問題を意識しており、こうした問題に対しては例えば経済成
長の抑制といった動きが起きることを期待している … 73.1%
3.環境保護や地球温暖化防止のために使われるのであれば、今より多くの
税金を払ったり商品を買ったりする … 59.2%
4.人間関係を広げ、育てていくことは非常に重要だ … 96.2%
5.他人を助けたり、他人のユニークな素質を引き出すことは非常に重要だ
… 93.3%
6.1つ以上のボランティア活動をしている … 33.7%
7.内面的な成長を非常に重視している … 96.8%
8.政治と宗教は結びつくべきではないが、生活の中での精神性や宗教的要
素はこれからもっと大切になってくると思う … 59.5%
9.職場での男女平等はもっと推進されるべきで、職場や政治の場でより多
くの女性リーダーが登場すべきだ … 87.2%
10.世界中の暴力や女性・子供への虐待を懸念している … 95.4%
11.政治や政府支出は、もっと子供の教育や健康、地域の再生、持続可能
な地球環境の創造に重点を置くべきだ … 90.5%
12.旧来の保守派と進歩派を軸とした政治システムに満足せず、かつ勢力
の弱い中間派ではない新しいあり方を見つけたい … 71.5%
13.どちらかと言うと将来を楽観視していて、メディアから流されるシニ
カルで悲観的な見方は信用しない… 33.9%
14.新しくより良い生活を作り出すことに関わっていたい… 87.7%
15.合理化や環境破壊、途上国の搾取など、大企業が利益を上げるためと
して行っていることを懸念している … 83.2%
16.家計をきちんと管理しており、無駄遣いを心配していない
… 29.0%
17.成功や出世、ぜいたく品を持ったりそれらにお金を使うことに重きを
置く現代文化は好ましくない … 53.0%
18.見知らぬ地域やそこに住む人々が好き。自分とは異なるライフスタイ
ルを体験したり学んだりするのが好き … 71.7%
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■持続可能な地球環境や経済のあり方を望む
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質問の1〜3、11、15、17を見てみると、持続可能な地球環境や経済
のあり方を願い、現状に対する不満や危機感を抱いている人が多数いること
が分かります。これは、LOHAS的価値観として最も特徴的なものです。
ただ、3と17あたりは賛否が割れていて、私たちがLOHAS的価値観に
変わっていく途中にあるのかもしれないことを感じさせます。
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■人間関係を広げながら、自己実現したい
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LOHAS的価値観を持った人は、こうした傾向が特に強いそうです。4、
5、7あたりがそうですが、いずれの質問でも回答していただいた男性全員
が「あてはまる」としていたのは新鮮でした。
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■好奇心を持って理想実現のために行動したい
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12、14、18あたりからこうした傾向を読み取ることが出来ます。「好
奇心がある」「理想社会の実現のために率先して行動する主体が多い」とい
うことも、LOHAS的価値観を持った人たちに特徴的なことです。
以上のように、半数以上の質問で「あてはまる」が「あてはまらない」を大
きく上回り、私たち日本人の間でもLOHAS的価値観を持つ人が相当数い
そうなことが伺えます。「あてはまる」のほうが少なかった質問は、「4−
1−6ボランティア」「4−1−13将来を楽観視」「4−1−16家計を
きちんと管理」の3つ。LOHAS的価値観を持った人であっても、家計不
安に代表される将来への漠然とした不安感を克服するのが難しい日本的な状
況と無縁ではいられないということなのでしょう。
次は「4−1−19代替医療に関心がある」から「4−1−32仕事と自分
の生活は分かち難く結びついており、はっきり区別できない」について見て
みましょう。これらの質問は、LOHAS的価値観を持った人に特徴的な暮
らし方や仕事に対する考え方を反映させて、「きゃりあ・ぷれす」編集部で
独自に作成しました。
19.代替医療(東洋医療、心理療法、免疫療法等)に関心があり、自分の
生活にも積極的に取り入れたい。(もしくは既に取り入れている)
… 61.8%
20.延命治療だけが医療ではないと思うので、臓器移植には疑問を感じて
いる … 37.2%
21.人間が生物の遺伝子を操作することに違和感を覚える… 89.3%
22.なるべく添加物の入った食べ物は避けるようにして、抗生物質が与え
られていない肉や有機農産物を選ぶようにしている … 68.3%
23.ファーストフード店やファミリーレストランではあまり食事をしない
… 52.1%
24.健康のために実践していることがある … 74.7%
25.昔から日本で食べられている食材は体に良いと思うので、普段の食事
に積極的に取り入れたい。(もしくは既に取り入れている)
… 89.1%
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■なるべく薬に頼らない病気予防を心がけている
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これらの質問からは、日ごろの生活や食習慣から意識することによって、な
るべく薬に頼らずに病気を予防しようと心がけている人が多いことが分かり
ます。有機農産物やホメオパシーといった分野が日本でももっと広がること
が求められているのでしょう。
26.普段なるべく花や緑に接する生活を心がけている … 62.1%
27.高層マンションが立ち並ぶ場所より低層住宅地に住みたい。(もしく
は既に住んでいる) … 72.6%
28.屋上緑化など街を緑化することに関心がある … 80.9%
29.家制度のお墓より、森林墓などの個人墓で仲間とともに眠りたい
… 51.2%
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■身近に自然を感じていたい、血縁を超えた仲間意識
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これらの質問からは、身近に自然を感じる暮らしをしたいと考える人が非常
に多いことが分かります。そのように暮らすことがますます難しくなってい
る現状の裏返しでしょうか。LOHAS的価値観の人々は、「自然を愛し」
「地域社会を再生したい」と考える割合が多いという特徴も持っています。
また、家族はもちろん大切ですが、血縁を超えた人間関係にも重きを置く人
々です。
30.仕事は、収入より自分のやりたいことややりがいを優先させたい
… 77.5%
31.自分が仕事で関係している商品やサービスが、社会に役立つものであ
ってほしい … 96.8%
32.仕事と自分の生活は分かち難く結びついており、はっきり区別できな
い … 51.6%
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■やりがいを持って社会貢献できる仕事を
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LOHAS的価値観には、「金銭的・物質的な豊かさ、社会的成功を最優先
せず」「やりがいのある仕事を通じて、理想実現のために行動する」という
要素も含まれます。LOHAS的価値観を持った人々にとっては、仕事イコ
ール自分の生き方そのもの。だから、仕事と自分の生活が分かち難く結びつ
いているという考えに至るのでしょう。
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●「ライフスタイル・価値観」アンケート結果について
宮崎郁子
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●4−1−1〜32と4−2−1〜12について
LOHAS的価値観は、「きゃりあ・ぷれす」が目指す「オルタナティブな
価値観と方向性」にかなり合致していると感じています。そこで、今回のア
ンケートでは、価値観に関するアンケート項目の第2部として、それに沿っ
た質問項目4−2−1〜12を設定しました。
また、LOHASで設定されている18の質問項目は、日本人である私たち、
そして、ある程度の知識レベルの人たちにとっては、全体的にかなり賛成し
やすいものになっているように私には思えました。実際、18の質問項目の
内10個以上「あてはまる」と答えた方は、何と92.7%だったのです。
これは米国での30%、EU諸国での35%に比べると、驚くべき数字です。
(日本人成人全体を推し量る本格的調査は、残念ながらまだ行なわれていま
せん。是非近い内に実施させたいものです。)
けれども、先程書きましたように、これはある程度予想ができるものでした。
そこで、もう少し意見が分かれるであろう質問項目4−1−19〜32と、
さらにYES/NOのチョイスでなく2択式にした4−2−1〜12を設定
してみました。実は、2択式のこの12の設問は、<これまでの価値観の延
長としての方向性>と「きゃりあ・ぷれす」が目指す<オルタナティブな価
値観と方向性>の対立概念をややムリやり質問文に落とし込んだものです。
詳しくは、何と10カ月ぶりとなってしまった「発行人の気紛れコラム」
<
http://www.pangea.jp/c-press/corum/corum.cgi
>
に書きますので、そちらで読んでいただければ幸いです。結果は、全体集計
では何と、すべての項目でこちらがオルタナティブ系に設定した方への賛同
が50%を超えました。この結果については、嬉しい予想外という気持ちも
実はあります。というのも、できるだけ結果を誘導しないように、問の設定
をどちらともいえそうなものにしたり、A)B)の並びをランダムにしたりした
からです。この結果には、私にとっては4−1−1〜32の結果以上に驚き
ですし、「きゃりあ・ぷれす」のスタンスが信認されたような嬉しさを感じ
ています。
●「ライフスタイル・価値観」アンケート4−1−1〜32対象別結果につ
いて
LOHASに関する18の質問を含む4−1の32項目の回答結果について
は、対象別に「読者のみ」「学生」「読者以外の社会人」に分けてグラフ化
しました。
<
http://www.pangea.jp/c-press/anq/anq6/00anq4_02.html
>
また、「学生」を除く社会人については、男女での比較もグラフ化してみま
した。
<
http://www.pangea.jp/c-press/anq/anq6/00anq4_03.html
>
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■全体として「あてはまる」の度合いが高いので、あえて度合いが低いもの
に注目してみました。
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4−1の結果の対象別一覧グラフを見ますと、「あてはまる」が50%未満
の項目数は、「読者のみ」は32項目中5項目、日本女子大学教授で労働経
済学がご専門の本誌ブレーン、大沢先生にご協力いただいた「学生」の方々
の答えでは9項目、「読者以外の社会人」は4項目となっています。
「読者以外の社会人」といっても編集メンバー周辺の方々なので、一般の平
均というよりは、かなり限定された、価値観が「きゃりあ・ぷれす」に近い
方々だということが、逆にこの結果から見て取れるのですが、この方々が最
もLOHAS度が高いという結果になりました。特に、「6.1つ以上のボ
ランティア活動をしている」については、このグループが唯一50%以上
「あてはまる」という結果になっているのが目を引きます。
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■男女別の結果から見えること
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編集部での大方の予想では、女性の方がLOHAS度が高いだろうというも
のでした。しかし、結果としては、ほとんど変わらないどころかむしろ逆の
傾向すら見えるというものでした。けれども、これが一般成人の男女差を現
わしているとは、必ずしもいえないでしょう。
まず人数的に差が大きいことと、「きゃりあ・ぷれす」の男性読者の方々や、
編集部周辺の方々でこれからの価値観に関する調査に関心を示して、アンケ
ートに自主的に参加してくださった男性の方々というのは、もうそれだけで
かなりスクリーニングされていると思われるからです。
逆転現象が現れているものの中で特に注目に値するのは、やはり「6.1つ
以上のボランティア活動をしている」というのと、もうひとつ「16.家計
をきちんと管理している」、さらに「32.仕事と自分の生活は分かち難く
結びついており、はっきり区別できない」という項目です。今回のアンケー
トに参加してくださった男性の方々をイメージ的にとらえると、LOHAS
的あるいはオルタナティブ系の価値観をもち、それを行動として実践してい
るスジガネ入りの“The Cultural Creatives”といえるかも知れません。
より気持ちのいい働き方や社会のあり方を実現するためには、もとより本当
の意味での(女性差別問題の言い換えとしてのそれでなく)男女共同参画社
会の実現が必要です。そういう観点でも、大変希望が持てる調査結果となっ
たといえるでしょう。